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お母しゃまー!
キッチンに飛び込んだロージーは、母親の足にすがり付いた。
母親はゴージャスなドレスに、白いエプロンを巻いて、愛娘にしゃがんでキスをした。
ロージーは、母親の首に手を回してうなじの匂いを嗅いだ。
父親そっくりだった。まず匂いを把握するのはエルネストの子供達の特徴だった。
「まあロージー。キッチンは危険ですわ。ご覧の通りですわ」
キッチンの床は割れた皿やグラスの破片で埋まっていた。
「お母しゃま 、今日はどうしたの?ご飯ならアーサッテおじちゃまが作りますのに」
途端に母親、アリエール・リトバール・エルネストは顔を真っ赤にして髪をかき上げた。
白い三角巾から伸びたロール髪はキラキラしていて、左の薬指には、イカルゴが作製した指輪が見えた。
ローズルビーリングと題して数々の賞を総なめにしたリングは、薄く加工した最高級のルビーを重ねたキーストーンが特徴で、彫金師イカルゴ・バーニーズによる傑作の仕事だった。
その緻密な美しさは虫ですら魅了し 、蜜を吸う蝶が止まったという逸話があった。
「ロージー、お兄様と遊んでいらっしゃいな。それから、ええ、まあ、あら。今日は、お父様がお泊まりになりますのよ」
ぱあっと、ロージーの顔が綻んだ。
「パパ先生が!お父しゃまが遊びに来ますのね?!今日学校がお休みなのに?!素敵ですわ!ああ!だからお母しゃま 、いつもと違うパンツを履いてますのね?!ショーブ下着ですわ!」
「ロージー!それは知っていてもあえて言わないのがレディのたしなみですわ!この可愛い犬っ娘ちゃん。ご飯楽しみにしててくださいまし。ってそもそも私の料理に一切リアクションがないのは何故ですの?」
「私はアーサッテおじちゃまの美味しいご飯をいただきますわ。お母しゃまの家庭毒物はお父しゃまが食べますもの。お兄しゃまー」
兄のロズウェルを探して、ロージーは行ってしまった。
「きいいいいいい!何ですの?!」
アリエール・リトバール・エルネストはプリプリ怒っていた。
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