お母様は城主様

2/4
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
 お母しゃまー! キッチンに飛び込んだロージーは、母親の足にすがり付いた。  母親はゴージャスなドレスに、白いエプロンを巻いて、愛娘にしゃがんでキスをした。  ロージーは、母親の首に手を回してうなじの匂いを嗅いだ。  父親そっくりだった。まず匂いを把握するのはエルネストの子供達の特徴だった。 「まあロージー。キッチンは危険ですわ。ご覧の通りですわ」 キッチンの床は割れた皿やグラスの破片で埋まっていた。 「お母しゃま 、今日はどうしたの?ご飯ならアーサッテおじちゃまが作りますのに」  途端に母親、アリエール・リトバール・エルネストは顔を真っ赤にして髪をかき上げた。  白い三角巾から伸びたロール髪はキラキラしていて、左の薬指には、イカルゴが作製した指輪が見えた。  ローズルビーリングと題して数々の賞を総なめにしたリングは、薄く加工した最高級のルビーを重ねたキーストーンが特徴で、彫金師イカルゴ・バーニーズによる傑作の仕事だった。  その緻密な美しさは虫ですら魅了し 、蜜を吸う蝶が止まったという逸話があった。 「ロージー、お兄様と遊んでいらっしゃいな。それから、ええ、まあ、あら。今日は、お父様がお泊まりになりますのよ」  ぱあっと、ロージーの顔が綻んだ。 「パパ先生が!お父しゃまが遊びに来ますのね?!今日学校がお休みなのに?!素敵ですわ!ああ!だからお母しゃま 、いつもと違うパンツを履いてますのね?!ショーブ下着ですわ!」 「ロージー!それは知っていてもあえて言わないのがレディのたしなみですわ!この可愛い犬っ娘ちゃん。ご飯楽しみにしててくださいまし。ってそもそも(わたくし)の料理に一切リアクションがないのは何故ですの?」 「(わたきゅし)はアーサッテおじちゃまの美味しいご飯をいただきますわ。お母しゃまの家庭毒物(かていどきゅぶつ)はお父しゃまが食べますもの。お兄しゃまー」  兄のロズウェルを探して、ロージーは行ってしまった。 「きいいいいいい!何ですの?!」  アリエール・リトバール・エルネストはプリプリ怒っていた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!