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春真の自宅の前、自転車を下ろし、彼は春真に早く玄関の中に入るよう促した。
「あ、あの、ほんとにほんとにありがとうございました…!」
「もういいって。それよか早く中入れ。危ねーから。」
「はい、…あの、ほんとに、ありがとうございました…。」
まだ何かたくさんのことを話したい気がするのに、何も出てこない。
「…。」
彼は小さく表情を緩ませると、運転席の方へと歩いていった。
「じゃーな。」
その言葉を残すと春真の姿を確認し、彼はゆっくりと車を出す。
夜の暗闇に溶けるように消えていく赤いテールランプを見送りながら、春真はどこか切ないような気持ちを感じていた。
「あ…名前、聞けなかった…。」
彼の姿を思い出せば、また少しだけトク…と鼓動が跳ねた。
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