夜に溶けては、きみの夢を見る。

1.春真

遠野春真(とおの はるま)、20歳。
教員を目指して近くの大学の教育学部に通う、大学生である。
色素の薄いふわふわの髪と、日焼けしにくい白い肌。
大きな二重の瞳に、頬と唇はほんのりピンク色で、中性的なその容姿は一見すると女の子と見間違うような、いや、なんならその辺の女子よりも愛らしい。
勉学に励みつつも、親に少しでも負担をかけまいと、この居酒屋でバイトしている。

若いマスターが開いた創作和食を中心としたこの居酒屋は、センスのよい落ち着いた和モダンな雰囲気と、雑誌にも載るほど美味しいと評判の料理、それに見合った品揃えも豊富な酒類とあって、週末ともなれば常に客席は満席になるほどのなかなかの人気店であった。

大学→バイト→帰宅、がもはや春真の日常の殆んどになってしまってはいるが、人柄の良いマスターと、楽しいバイト仲間に囲まれ、忙しいながらも充実した毎日を送っている。
そして、そんな彼にはもう１つ、このバイト先での誰にも言えない楽しみがあった。