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 煙草の火がフィルターのそばまで来ていた。音を立てて回る換気扇に向かって煙を吐き出し、水道の水で煙草の火を消した。燃えるゴミの袋に濡れた吸殻を捨てて、コップに水を注いで飲んだ。煙草で鈍った舌では、東京の水も美味しく感じた。少し眠れそうな気がした。  キッチンの電気を消して、換気扇を止める。東京では、完全な暗闇は訪れない。カーテンを遮光性の高いものに換えれば訪れるかもしれないが、そこまでして、闇を歓迎しようとは思ってない。  ベッドに潜り込むと、私の抜け殻の熱さはどこかに行ってしまっていて、冷たく無機質な布地が私を迎えた。枕に頭を落とす。少しずつ意識が遠のいていく気がした。これが薬のためなのか、煙草のためなのか、それとも肉体の防衛本能なのかわからないが、眠れるのであればなんでもいい。そう考えたときには、意識が飛んでいた。
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