閃光

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凛の瞳に吸い込まれる。 その美しく、僅かな光をも取り込んで反射する潤んだ瞳に、もう真翔を拒絶する鋭さはない。 「……そんなに、似てるの?」 艶やかな唇が小さく動く。 先程まで触れていたかと思うと、急に胸が柔らかく締め付けられ……気付けば真翔は、凛に対して愛しさを感じてしまっていた。 「うん」 それを隠すかのように、視線を外さず目を細める。 「……」 それに堪えられなかったのか。凛が視線を逸らす。 窓から差し込む花火の緑や赤が、凛の白い頬に色を滲ませる。 その色が消え、暗闇の中目を凝らせば、ほんのりピンク色に染まった頬が伺えた。 「………いいよ、しても。 その代わり……」 練炭を、助手席にセットする。 車内が熱くなる事を想定し、クーラーを掛けっぱなしにしておこうとする真翔に、エンジンを切って欲しいと凛がお願いをする。 そして後部座席へと移動し、改めて向き合い体を寄せる。 凛の大きな瞳に光が宿って煌めき、しかし、憂いを帯びて不安げな色を見せる。 凛の頬に、触れる。 ほんのり熱を帯び、生命の息吹を感じれば、愛おしさが込み上げる。 まだ、ここに生きているという証でもある、温もり。 真翔の顔が近付き、そっと凛が瞼を閉じる。 少しだけ突き出された柔い唇。それを、真翔の唇が綺麗に塞ぐ。 「……!」 凛の目が、弾かれた様に見開く。 長い長い眠りについた姫が、今目覚めたかのように。 「……これは…?」 混入された異物を舌先に載せ、真翔に見せる。 「死ぬ時に苦しまずに済む、魔法の薬。……睡眠導入剤だよ」 「……ふ、」 凛の顔が少し綻ぶ。 「そんな魔法があるなら、早く言ってよ」 先程まで堅く冷めていた凛の、柔らかで可愛らしい表情。 その表情に、恋人の面影が重なる。 「……凛!」 彼女を思い描きながら、目の前にいる人の名を呼ぶ。 二の腕を掴み、喉仏の浮き出た細い首に顔を埋め──舌を這わせ、貪って強く吸い上げ、柔肌に甘く歯を立てた。 「……ん、」 鼻から抜ける甘っとろい声。 声変わりしていない、細くて高いその声に……身体の深部が沸き立ち、歓喜に震えた。 ──生きてる。 毛細血管にまで、沸騰した血液が押し流され、肌がじんわりと汗ばんでいく。 その甘く痺れる指でボタンを外し、肌を滑らせシャツを剥ぎ取る。 露わになった細い裸体。見開いた瞳に映るそれに、真翔は息を飲んだ。 「……これ、は……」 現れたのは、躯幹についた幾つもの鬱血痕。歯形。 ……所々鋭利なもので浅く切られ、ミミズ張れのように盛り上がった傷跡。圧迫痕…… 透き通る様な白い肌に痛々しく映えたそれは、凛の身に何が遭ったのかを容易に想像させた。 『この体は、大人の欲に塗れてしまって……もう、綺麗なんかじゃないけど……』 先程の言葉が過る。 『………いいよ、しても…… その代わり……その人にする様に、愛して…… ……僕に、教えて……』 ……そういう、意味だったのか……
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