-7-

1/1
86人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

-7-

 三澤と部屋に戻り、セミダブルのベッドに押し倒される。体格上自分がネコ役なのだろうが、尻を使ったセックスは経験がない。 「無理にはしませんから……」  珍しく切羽詰まった声で三澤に浴衣を剥かれ、はだけた胸をじっと見られた。 「夕方温泉に入ったときもヤバかったし、迅人さんに先を越されちゃったけど……やっと貴方のソコに触れる」  部屋に戻る前の激しいキスで、すでに五条はぐったりしていた。以前バックヤードで肌を少し合わせたとき、三澤は手加減してくれていたのだ。  あのときのキスは五条への試金石で、ディープキスができた時点で五条を落とせる望みがあると、自信が持てたと聞かされる。改めて三澤を見ると、獰猛そうな瞳ではあるが、いつものにこやかな笑顔だ。 「貴方は迅人さんが好きでしたから。ずっと我慢していました」 「は? 我慢だって? つか、お前酷い男だよな。いくらオレを落とそうとしていたからってさ、オレが今まで付き合ってきた男を寝取らなくてもいいだろう?」  いくら自分を追いかけてきたとはいえ、その好きな相手へ嫌がらせのようにするのはどうなんだと思う。毎回恋人に振られるたびに落ちこんでいた日々を返してほしい。 「貴方が惚れっぽいのが悪いんです。それに本当は、誰も寝取った人なんていませんよ」 「……はぁ?」  では元恋人たちは、三澤が寝取ったのではなく、五条よりも三澤に惚れて去ってしまったということか。結局は自分もこの笑顔に毒され、魅せられてしまった。なんて奴だ。  思うと同時に三澤から、貴方は落ちこんでも長くて一か月後には誰かを好きになっているし態度もわかりやすいから、自分の好みじゃない相手でも一緒に追いかけなくちゃいけなかった、そのときのこちらの気持ちも考えてくれと注意されてしまった。 「う、それは……」  三澤にうまく丸めこまれた気もするが、五条は小さく謝った。すると三澤がキスをしてくれたら許すと言うので、軽く唇に触れると頬をがっちり包まれてしまう。 「ふ……ん……んん……」  自分と恋人になったらこんなことになるのだとばかりに、三澤は五条の口腔内をめちゃくちゃに舌で攻めこんでくる。  歯茎を執拗につつかれ、舌が飴のように舐められる。上顎もくすぐられて全身の産毛が逆立ち、声が漏れる。 「ちょ、も、やめ……」 「嫌です」  覚悟してくださいね、一言笑い、尻を揉みながら体を密着させたままの深く長いキスは、なにがなんでも今夜自分とセックスしたい三澤の本気だった。 「あ、は、ふ……ぁ」  気持ちがよすぎるキスのせいで、五条の中心はすっかり臨戦態勢になってしまっていた。 勃起しちゃいましたねと三澤にばれてしまい、憤死しそうになった。しかし三澤の股間もしっかりと隆起していて、お前だってその気じゃないかと反論してやると、更に笑みを深めてくる。 「キスをしているのが貴方なら当然でしょう? どんなに泣いても、嫌っていうほど、イかせてあげますからね」  胸で赤く実っていた二つの粒に三澤の唇と指先が触れると、天啓を受けてしまったような衝撃が五条の全身を打つ。求めていたのはこの感触なんだ、お前は、三澤の手先がとても好ましいと思っていたのだろう? 脳内でもう一人の自分の声が響く。 「っく……、あぁっ」  はしたなく声をあげてしまっても止められない。三澤は夢中で五条の乳首を舐め、吸いあげて性感帯にしていっている。 「あっ、やっ、ば、ばか……っ」  力の入らない手で三澤の頭をはたいても微動にせず、むしろそれで火が点いたかのようにいやらしい水音を立てて吸いつかれてしまう。指で触れているほうも、口で吸われているほうも、ジンジンとして腹奥が燃え盛るような感覚に陥ってしまう。 「やめ、ろ……って、あぁっ」 「そんなエロい声で言われても煽ってるだけですよ」  嬉しそうな表情でこちらを見上げ、盛り上がっている下着ごと陰茎を握られるとツキンとした刺激を受け、下着の中に精を吐きだしそうになった。もうそこまできているなんて今までのセックスではあり得なかったことだ。この先自分がどうなってしまうのか、恐怖心半分、期待心半分の思いになる。 「や、やめろ、イくから……っ」  止めさせようと手を伸ばすが、逆のその手をべろりと舐められて指を咥えられる。フェラチオのように愛撫されて、ぞわりとした感覚が背筋を這いあがると、握られたままの中心を揉まれてしまい、もう極みが近い。 「や、やだってっ、も、あ、あ」 「イっていいですよ」  耳に届いた三澤の声音は今までに聞いたことのない色気を含んだもので、五条は言われるがまま果ててしまった。浅い呼吸を繰り返していると、それすら奪おうと再び唇が重なってくる。先も過ぎるほど蕩けさせられたというのに、こじ開けられた口腔内へ、すべてを喰らおうとする舌が侵入してきた。 「んふぅ……っ、ん……っふ……ぅ」  朦朧とする意識の中で下着を脱がされ、濡れそぼった陰茎を直接触られた。達したばかりのそこはまだ敏感なままだ。 「ぐちょぐちょですね」 「っはぁ……っん!」  腰がびくんと浮いた。勃起は萎えるどころか、ますます元気になっている。 「五条さんって感じやすいんですね」  キスの合間に三澤の手は忙しなく袋を揉んでいる。三澤はいつの間にか自分の浴衣を脱いでいて、大きく開かされた脚の間に体を収め、剛直で一度会陰を突かれた。 「んぁっ」  胸と胸をぴったり合わせ、密着度が高くなる。口づけを再開され、また上顎を舌の先端が往復すると、こそばゆくも気持ちがよく、唾液が溢れて口端から漏れていく。それを三澤の唇が吸いあげ、自分の唾液と混ぜて送りこまれる。 絡まる舌は双蛇のようにうねり、離れようとしない。ここまで深く執拗なキスは初めてで、三澤がどれだけ自分に飢えていたのかがわかってしまう。  五条は息も絶え絶えに、快感がずっと先行していてもっとほしいと懇願するように、気づけば三澤にしがみついていた。これだけ好くされてはもう、高みを超えていかないと無理だ。三澤も五条を気持ちよくさせようと、必死になって愛撫を続けている。  ようやくキスが解け、唇が五条の首筋を這う。吸いあげる音がして、印をつけられたとわかった。 「……ここと、それから、ここも」  五条の内腿、鎖骨付近をするりとなでられる。柔らかい場所はそれだけでも全身を震わすほどの快楽になる。 「ずっと前、五条さんの体に痕がついていたでしょう?」  それはバーでしたたかに酔った五条が、三澤と一緒に迅人の部屋に泊めてもらった翌朝気づいたことだ。あれは迅人がつけたものなのか、それともこの男が、と懊悩した記憶も新しい。 「それ、俺がやったんですよ」  五条の知らない間に三澤と迅人がいい感じになっていたらマズいと思っていたが、三澤はむしろ、五条の無防備さに理性を抑えるのが大変だったと告げる。 「キスマークをつけているところを迅人さんに見られて、それで俺が迅人さんじゃなくて五条さんを追いかけているのがばれちゃったんですけどね」  迅人の部屋に泊まった翌朝、五条の胸元と内腿についていた痕は、三澤が酔いつぶれた五条を寝かせるときに服を脱がせてつけたものだったそうだ。五条はあの痕をつけたのが三澤でよかったと思うと同時に、どうしてそんなことをしたのか訊いた。 「好きな人の裸を見たら、なにもせずにはいられませんでした」 「……ばーか」  三澤の後頭部を抱えてキスをしてやると、三澤はまた嬉しそうに、五条の体を悦びへ持っていこうと陰嚢から会陰の部分を指先でなぞってきた。 「そろそろ準備をしても?」  探るように見つめられ、五条もいよいよ腹をくくった。 「いちいち訊くな。……好きにしろ」  自分が受け入れる側になるのはプレッシャーだが、三澤とならきっと気持ちいいだろうし、信用もしている。なにより自分が、三澤とこうなることは自然なことだったと気づいてからは、もう早く自分の中で渦巻いているぐずぐずとした快楽を放出させてほしい思いで一杯になっていた。  三澤はきっと持ってきていたのであろう、ローションのふたを外して掌にまぶし、五条のまだ萎えていなかった幹に塗りつける。ねっとりと、五条の理性を狂わせてやろうとしている凶悪な顔つきだ。そんなことをせずとも、早くしてほしくてこちらから仕掛けてもいいくらいなのに。 「……悪い顔だな」 「五条さんのせいですよ」  見ると、三澤の勃起は自分の中にすぐにでも挿れたげに天を向いて濡れている。そのいやらしさといったら、いつも五条に見せるあの悪魔のような笑顔と同等だ。 「オレは悪魔に惚れられたのか……」 「貴方も相当な小悪魔ですけどね」  悪魔とは堕ちた天使の成り変わりで、自分のような愚かな人間を誘惑する存在だとなにかの本で読んだ記憶がある。そんな悪魔の微笑みを持った男が、紆余曲折があったとはいえ、何年も自分を追いかけてきてくれたのだから、少しくらいは振り向いてやっても天罰は下るまい。 「五条さん、もっと腰を上げて」  腰を浮かせるとバスタオルを敷かれた。すり、と会陰を指で刺激されて呻くと、蕾を柔らかく揉んできて、やがて一本がにゅるりと五条の中に埋まる。指の感触とはこういうものかと思った刹那、前立腺を刺激された。 「あうっ!」 「ここですよね、耐えられますか?」  言って三澤はこりこりと中から快感の種を植えつけてきた。内側の法悦は想像以上で、勝手に五条の腰が揺れ、声がひっきりなしに口から飛びだしてくる。 「いやらしい声」  言ってくる三澤の、色気を含んだままの表情こそがいやらしいと自覚がないのだろうか。嬌声を上げてばかりになっている自分には、反論する余裕がない。  中の指が二本、三本と増やされるころには、喘ぎすぎて吐息のような声しか出せなくなっていた。三澤は大丈夫かと伺いながらもその手を止めることはない。ぐぷぐぷと粘度が強い音や、三澤の汗の匂い、下から見上げたときの表情が、耳に、鼻に、脳内にすべてに響いてくる。  好きだ、と言いたい。  けれどどうも照れてしまって言えない。それより快楽のほうが勝っていて、頭の中がぐしゃぐしゃになって、もうおかしくなってしまいそうだ。 「みっ、さわぁ……」 「限界ですか?」  ごり、と脆弱部を指の腹でえぐられて、ひっと息を飲んだ瞬間、五条のペニスの先端から白濁がしぶいた。 「あぁ……ッ!」  扱いて、あるいは扱かれて達するものとは格段に違う。まだあとにも快感が待っているかのような、恐ろしさすら感じるほどの射精だった。 「ああ、イきましたね。エロいですよ」  体中にべっとり散った精液をぬりつけながら、先端から滴る残滓を指で掬われる。 「ひっ……ん」 「ほら、貴方のまだ勃ってる」  意地悪な言いかたをする三澤に、ほかの男にもこんな風にしていたのかと思いついてしまった途端、急に心が冷えてしまった。 「――どうしました?」 「お前、ほかの男ともこうなのかよ」  文句を言ったつもりだったのが、三澤の顔を見ると、なぜか満面の笑顔になっている。 「五条さん……それって嫉妬、ですよね?」 「なっ! ち、ちが……あっ、やだっ、ばかっ! ああぁっ、ああ……っ」  挿れますとも言われず三澤の先端の部分が押しこまれた。ぐっとさらに広がった秘孔が五条を苦しめる。 「お前のっ、デカいんだよっ!」  扱きあいをしたときもかなり大き目だと思っていたけれど、体感となると話は別だ。こんなものが自分の中にあるというだけで、経験したことのない震えがくる。 「痛いですか?」  さすがに申し訳なさそうな顔で三澤が覗きこんでくる。しかしこの震えは恐怖ではなく、三澤と繋がれた悦びからくるものだ。 「……あんまり」  本当に入口は苦しいだけで、痛いという感覚ではない。そればかりか、先端のみでも三澤とひとつになっているという実感が脳内を占拠し、そしてこの男を受け入れられたのだという嬉しさが、じわじわと下肢から手足の末端まで広がっている。 「オレの中、気持ちいい、か?」  笑ったつもりだったが、失敗したかもしれない。五条の言葉を聞いた三澤が口元を歪ませたからだ。渋面になった三澤はぐっと歯を噛みしめ、こちらの目を射抜くように見る。 「ちょっと、そういうこと今言わないで」  言うなり一気に五条の奥まで三澤の剛直が挿ってきた。呼吸が止まってしまうほどの質量に、五条は顎を上向かせ、口をパクパクさせる。 「はぁぅっ、あぁ……っ」 「まったく貴方って人は……っ!」  唇を塞がれて口腔内をこれでもかと言うほどに舌で掻きまわされ、乳首をひねられてしまう。すでに甘い毒が全身に回ってしまっていた五条は腰が何度も揺れ、またも弾けてしまった。 「あッ、も、もう……や……あ……ッ」 「嫌ってほどイかせるって、言いましたよね? 俺。まだ終わらせてあげませんよ」  三澤の律動が始まった。前立腺はもとより、さらに奥の、届いてはならないところまでを剛直が犯してくる。五条はもうなにも言えずにただただ悦楽という名の伏魔殿まで三澤に引きずりこまれていく。自分の乱れた姿をいやらしいと囁かれ、脳の中まで犯されてなにも考えられなくなる。  五条は三澤にしがみつく力すら残ってない。浅く、深く、早く、そして緩慢に腰を揺らす三澤は五条の背中に手を回してきた。 「五条さんのココは、俺だけが知っていればいいんです」  臀部を掴まれた状態で抱き起こされ、馬乗りの格好になると、最奥部にまで三澤が届いてしまい、五条の目の前で火花が何度も散ったように見えた。 「あっ、あぁ……ッ! ばかっ、お前以外、誰もいねぇよ……っ!」  そうですよねと三澤が言ったきり、律動の速さが変わる。三澤も限界が近いのだ。 「好きです、五条さん……ッ」  三澤の切羽詰まりきった声音を聞き届けるとほぼ同時に、オレも、と小さくつぶやいた。とっくに限界の頂点へ連れられていた五条は、愛しい男と一緒に果てた。  部屋に備えつけられていた風呂でも三澤からたっぷりと愛され、三澤との色ごとを貪りつくすころには、日の出時刻はとっくに過ぎていて、辺りが少しずつ輪郭を見せていた。 「無理はしないって言ったじゃねぇか」  使用しなかったもうひとつのベッドに二人一緒に入り、三澤に嘘つきと額を小突いてやれば、軽く笑って肩を竦める。  その態度に口を尖らせていると「貴方が可愛いのがいけないんですよ」キスをされた。そして少しでも眠るため、後ろから抱きしめられながらあやされる。オレを眠れなくしたのはいったい誰なのかと激しく突っこんでやりたかったが、体中が悲鳴を上げているので放っておくことにした。 「あ、そういや、もうすぐメイクコンテストだな」  店舗でのメイク練習であんなことにならなければ、こうはなっていなかったかもしれない。いずれにせよ、三澤とは結果的にこうなる運命だったのではないか。五条はなぜかそう思えた。 「今度は負けませんよ」  三澤に背後からきゅっと力を籠められる。心地いい加減だ。愛された疲れも相まって、すぐにうとうとと睡魔が襲ってきた。安心感に包まれながら、五条は眠りについた。 ********************
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!