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清掃員につき
目撃者とされる清掃員が現れた。
部屋に案内されると深々とお辞儀をし、勝手に自己紹介をはじめた。
「僕はテラシマっていいます。27歳で、もう10年くらいこの仕事やってます。よろしくお願いします!」
なんとも言えない青年の迫力に、さすがの刑事たちも 一瞬押し黙った。
そして、新米刑事がお礼を口にした。
「こちらこそ、今日はありがとうございます!テラシマさんのおかげで、事件がスムーズに解決しそうです!」
新米刑事はにこやかに、ベテラン刑事は少しふてくされたように テラシマ青年にお辞儀した。
「で、テラシマさん。あんた、あの日ホントにあのマンションにいたんだな?」
質問しながら着席を促し、ベテラン刑事は凄みを聞かせて青年を見つめる。
「はい。あの日のシフト表を見てもらうか、マンションの防犯カメラにも映ってると思います」
青年はハキハキと答える。
「じゃあ、ホントに見ていたのか?」
ベテラン刑事は疑いながら、新米刑事はその後ろで目を輝かせながら 青年の返答を待った。
青年は少し考えるような素振りで下を向き、そして、刑事らに顔を向けた。
「お答えできません」
まかさのセリフに、2人の刑事はお互いの顔を見やった。
「どどどうしてです?」
新米刑事はビックリして、思わずベテラン刑事の肩をつかみ、青年の方へまえのめりになって聞いた。
「それは……僕が窓拭き清掃員だからです」
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