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見ざる、言わざる、聞かざる
清掃員にはルールがある。
顧客情報に触れないように作業する。作業上、やむを得ず顧客情報に触れてしまった場合は、それを守秘する。
この鉄の掟を理解し、守秘することを誓わなければ 清掃員として働くことは出来ないのである。
「僕は窓拭き清掃員として、守秘義務がありますし、契約書にもサインしています。それに、この仕事に誇りをもっているので、警察の方々とはいえ、お話することは出来ないんです」
馬鹿丁寧に青年は答える。
予想外の出来事に開いた口が塞がらない刑事たちは、ぶるぶると首を横に降り 我に返る。
「警察に対してはそれは有効ではありません。あなたが話した ということも誰にもわかりません。見たかどうかだけ、とりあえずお話しいただけませんかね?」
ベテラン刑事は、柄にもなく青年に懇願した。
だが、青年の態度は変わらなかった。
「お役に立てたかわかりませんが、今日はありがとうございました。失礼いたします」
青年は少しは役に立てたとでも思ったのか、足取り軽やかに帰っていった。
どちらの刑事も、青年をいつまでも見送った。
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