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互いに“今”の終わりを感じていた。
嫌だ、終わりたくない。心が悲鳴を上げる。
「もう少し、キスならしていい?」
せめてもの妥協案。やるせない表情の廉士の瞳に、同じ顔の私が映る。
どちらからともなく吸い寄せられて、噛みつく様にキスをする。私の下着だけに隔たれた上半身全部を押し付けて、制服を纏ったままの足を絡めて、夢中で求め合う。
廉士の身体、息遣い、におい、温度、キス。全ての感覚で、可能な限り廉士を刻み込む。
いつかこの選択を正しかったと思える日が来るのだろうか。抱かれなかった後悔ばかりが募るんじゃないだろうか。
わからない。それは、大人になってみないと。
上になったり下になったり、体勢を変えながら何度も口づけを交わすうち、気づいたらベッドの端に寄っていた私達はそのまま床に落ちた。
「いってぇ……」
目が合う。急に我に返って、まともにお互いを見れなくなる。
たまらない気恥ずかしさを誤魔化す様に、身体を起こした廉士は目も合わせずぶっきらぼうに口を開く。
「続きは今度な」
「もう会えないよ」
「会うよ。俺は会いたい」
会いたいって。どうせすぐに私なんて忘れて、彼女だって作ってしまうくせに。
「私携帯ないし、次の住所もわからないのに」
「現代舐めんなよ。俺がもう少し大人になったら、必ず見つけだす」
月日と共に人も状況も変わる。だからそんな不変を信じた根拠のない言葉は嫌いだった。
それなのに今は、例え廉士の気持ちがいつか変わるとわかっていても、これが最後じゃないと夢を見せてくれる言葉がどうしようもなく嬉しい。
「ありがとう」
自然と頬が緩む。例え現実にならなくても、この幸せな記憶だけで十分だ。
漸く目が合ったと思ったら、廉士はすぐにそっぽを向いて背中を丸め、大きな溜息をついた。
「俺はこの先何回もこの変に真面目な性格を後悔すると思う」
「続き、する?」
「煽るなバカナ」
耳まで赤くした廉士の拗ねた横顔も、誰にももらったことのない甘い言葉も、決して忘れはしない。
そして私は、七月の昼中に廉士に愛されたつかの間の記憶を、心にもそっと刻み込んだ。
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