七月の昼中、君を刻む

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 廉士が覆い被さる。首を挟む様に廉士の肘が置かれる。頭に手を添えてもう一度深く口づけされた後、首に、鎖骨に、廉士の熱が私をなぞる様に下へ降りていく。  セーラー服のリボンが外されてキャミソールと一緒にが捲り上げられたから、自ら首を抜いて脱ぐ。下着が露わになる。  はっとした様に廉士が動きを止めた。私、何か間違えた? 「あの――」  不安と気まずさに耐えられず口を開くと同時に、胸元に廉士の唇が押し当てられる。  ただしそれまでと違い、キスの場所がバラバラだ。妙な違和感に少し頭を起こし、廉士のキスを辿って気づく。  廉士は、私の傷や痣を辿っていた。  最近は減ったもののよくある事で、痛みもないし特に気にしていなかった。だけど廉士に汚い体を晒したと思うと顔がカッと熱くなる。  廉士は理由を聞いてはこなかった。多分、私の家庭環境から察したのだ。  つけられた痕は消えない。だけどそれを癒すように一つ一つ、廉士の柔らかな唇が優しく触れる。程度と時期で色の違う痕を、指先で、掌で、唇で、慈しまれる。 「――っ……」  気づかないふりをしてきたけれど、本当はずっと前から廉士が好きだった。両想いだと分かったのに、会えるのは今日が最後だなんて。  どうして私は、廉士の傍を離れないといけないの?  身体の奥底から込み上げるものを感じて戸惑う。首を絞められたみたいに喉が詰まる。こんな感覚、初めてだ。初めてだけど、何かはわかる。  このままじゃ、泣く。  罵倒されても傷めつけられても心を閉ざすことができたのに。廉士の一挙一動はいとも簡単に私の心を揺さぶる。  呼吸が浅くなる。唇が震える。堪えろ、ここで泣いたら台無しだ。  口元を押さえ、瞼もぎゅっと閉じる。だけど、既に溢れていた涙が目尻を伝ってしまった。
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