七月の昼中、君を刻む

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  「何で」 「何でって。俺に言いたいことでもあるんだろ?」 「別に」 「そっちから引きとめるなんてよっぽどだろ。違う?」  廉士が確信を持ってクシャリと笑う。  だめだと理解しているのに、廉士がそんな顔をするから。スイッチの入った感情が押し込められず再燃する。  そこに一つの案が浮かぶ。 「じゃあ、今日だけ廉士の時間が欲しい」 「ん、いいよ」  他の人とは違う、哀れみも軽蔑もない真っ直ぐで柔らかな眼差しは、私の思惑にも我欲にも一切気づいていない。  ご近所で2歳年上の廉士は、私のどんな噂が立とうと私との距離の取り方を変えなかった唯一の人物だ。  私が廉士に近寄ることで廉士に悪い噂が立ってはいけないと、こっちがどれだけ素っ気ない態度で配慮をしても、めげずに会う度声をかけてくる。  そのことにとても救われた。  たとえ多くの人に愛されるスクールカースト最上位層の廉士に度々声をかけられることが、より私を浮かせたり妬みを浴びせさせたりすることになっていても構わなかった。  廉士がいたから、私はこの町で息ができた。
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