七月の昼中、君を刻む

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「嫌ならいい」 「嫌って言ってないじゃん」  うーんと唸った後、廉士は私の家を提案した。 「父さんが……」  いたら、面倒くさいことになる。パチンコに行っていたとしても、万が一帰ってきたら同じだ。  みなまで言わなくとも廉士は理解してくれたようで、そうか、と呟きながら考える様に顎に手を当てた。 「じゃあ俺んちくる?」 「でも私、廉士のお母さんに嫌われてるし」  幼い頃は笑顔で迎え入れてくれていたのに、いつしか目が合うだけで眉を顰められるようになった。  “あの家の子”と我が子が仲良くすることを好む母親がいないことは理解できるから、別に廉士の母親を責める気はない。  適した場所もない。お金も持っていない。ずさん過ぎた。やはり計画性のない行動なんてするもんじゃない。 「別に嫌ってないと思うけど。どっちにしろこの時間は仕事でいないよ」 「じゃあ廉士の家にしよう」 「ん、了解」  玄関を開けるとむっとした空気が押し寄せた。どこか懐かしいにおいが鼻をかすめる。  廉士はエアコンを点けると先に階段を駆け上がった。私は廉士の跡を辿る様に、一段一段ゆっくりと階段を踏みしめた。
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