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身体を支えるために私の頭上に手をついた廉士に見下ろされる。蔑む様な、見たことのない鋭い視線が刺さる。
それでいい。廉士は私に思い入れなんて持たなくていい。することだけして、軽蔑して、一刻も早く忘れてくれればいい。
「いつもこんなことしてんの?」
「うん、だから大したことじゃない」
「大したことじゃないって。じゃあなんで俺なの?」
「ちょうどよかったから?」
視界が回る。後頭部に鈍い痛みを覚える。私、廉士に組み敷かれている。
「ふざけんな」
「ふざけてないよ」
「いい加減にしろ」
「私じゃ嫌?」
抱きたい女になれるとは思っていなかったけど、高校生男児に抱きたくないと言われると、それは結構ショックだな。
「そうじゃない!」
廉士が拳を振り上げたから反射的に目を瞑る。顔のすぐ横に拳は堕ちた。
「嘘ばっかついて、一体何を隠してるんだよ」
「全部本当。何も隠してなんかない」
「お前は昔から嘘つく時の癖があるんだよ」
「えっ」
ばれてしまった、と、焦って咄嗟に聞き返す。
私の様子に、やっぱりというように廉士が息を吐く。
やられた。こんな簡単な罠にひっかかってしまうなんて。
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