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「さっきぶりー! しん…え、し……え、なに持ってんの?」
この気配は親友だ! と疑いもせず扉を開け、盛大に迎え入れる前にその右手に鷲づかんでる物を綺麗に二度見。
それでもその手の内の狂気という名の鶏は消えなかった。
…なんか、すっごい既視感。
「狩ってきた」
「買ってきて!?」
鶏目え回しちゃってんじゃん!
そこで脳裏に過ったのはいつの日か親友の同室者兼委員長クンのマイクロブタを夕飯の材料と持ってきた記憶エトセトラ。
どうぶつには、やさしくね。
「ひとまずその鶏返して来なよ…その子って理事長の鶏でしょ。また泣かれちゃうよ?」
「涙腺緩すぎなだけな」
緩くなった理由主に親友のせいじゃないかな。俺だったら朝昼晩涙垂れ流しだと思う。
理事長の不憫エピを聞く度に同情しちゃうのは嘘ではない……けども、親友が孫って時点で全デメリットは覆るからメリット尽くしだよね! 羨ましい!
「そんなら夕飯の食材どうしよっか。今から買い出し行く?」
「別に用意してある。ん」
「普通の食材だ…!」
感謝して受け取って、渡された食材を持ってけばカレーに決定した。わーい!
毎度のことだけどお泊まりと夕食の対価として親友は毎回律儀に材料を持ってきてくれんだよね。将来有望イクメン候補。
「じゃ、親友は風呂入ってていーよ。俺はテーブル片しとくから!」
「お前が先に入れよ。素顔見られんの嫌なんだろ」
さり気にメロい男だ親友…………。
唐突評論家気取りに渋い顔になったまま、二人が来ることをド忘れしてた俺は風呂場に直行した。
鶏はビニール袋に入れてキチンと返してくるらしい。偉いね親友!
厚意に甘え、シャワーだけでサッと済ませて髪を乾かせば薄水色の髪がパラパラ宙を舞った。
もちろん地毛ではないしきっかけは不本意。
…この髪色にされた際は一悶着あったりはしたけど、なんやかんや愛着が湧いちゃって結構気に入ってたりはするけどね。
それに親友も褒めてくれたしさ!
だなんて懐かしみながらドライヤーを片した直後。
洗面所の扉がスライドされた。
「ウッッッわわわわわ!!?!? 誰!?」
「お、仮面してねえんだ」
「へ…えあ、その声は転入生クン…? いらっしゃ、なに、なになになに!?」
反射で顔を覆ってしゃがみ込んだ中。常時不機嫌そうな声色と寄ってきた甘めの柔軟剤の香りでそう判断した。
んだけど、なーーーんだってこの子は俺の両手首ひっ掴んで外そうとしてくんのかな! あっちょストップストップ、なにコイツ、かなり力強っっ…!!
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