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「別に減るもんでもねえだろ」
「やめて! えっち! あほ! バカ!」
「暴言のボキャブラリー少な」
指の隙間から覗き見えた口許は見なきゃ良かったぐらい悪戯げに歪んでるやめてやめてやめて。君はどこぞの悪代官だよ!!
「ぶは、お前それで抵抗してるつもり?」
「ぅええ…なに…、え、な…いい笑顔〜…」
心臓が早鐘になる程度には必死だってのに笑われるし誰一人来ないしで涙目なってきたよ……。
それに体制が客観的に見ると襲われてるみたいになっ、いや襲われてるね。
しかも俺が図体のわりにひ弱な軟弱男みたいになってんね。この子の握力が単に強いだけなのに。
…何かしらの誤解を招きそうな恐れ大。
やっぱ誰も来「なにやってんのお前ら」フラグ回収〜〜〜!!
開けっぱの洗面所にさらっと登場したのは我が親友。詳細に言うと俺が押し倒されてる状況でも全く動揺のない親友。
これがテレパシーてやつかなラヴ。
「ヘルプミー親友!!」
「…蓬、うるさいから退いてくんね」
たった一言。
散々泣こうが喚こうが退かなかった手が素直に離れたもので俺はこめかみを抑えた。
うん………?
「な、なんか不服だけど…ありがと親友! 君は謝っても許さないからね!」
「あそ」
「飯の準備出来たってよ」
「ホントだ。カレーのいい匂いするわ」
完全にナメ腐ってる転入生クンは息を取り乱してる俺なんか放って親友とリビングに向かってった。
……心が頑丈じゃなかったらリスキャぐらいはしてるかも知れないね。
胸元を抑えて闇堕ち間近になりつつ。
漂ってた匂いに釣られるように俺もリビングに急いだ。わーいカレー!
「ねえ、何で不貞腐れてるの。美味しい?」
「転入生クンに虐められたの。美味い」
わーいカレー! でもやっぱり少し不服。
でもでも庶務サマの作るご飯はやっぱり美味しいからカレーを運ぶ手は勝手に進むよ。面を持ちながら食べてるから食べづらいけど。
そんで、これだけあからさまアピールしてるのに転入生クンは素知らぬ顔で食べてるし黙々食べてる親友はもう三杯目。
転入生クンの神経も親友の胃袋も謎だし、
「拗ねてばかりだね。幼児かな?」
「あれ何だかカレーがしょっぱいな…」
爽やかスマイルがトラウマになりそうな今日この頃。
痛快笑顔で辛辣な言葉向けられたら誰でも脳みそバグっちゃうよね! データーすぐぶっ飛ぶ初期ファミコンになりそう。
とか言っといて、食べ終わる頃には庶務サマが満足そうに微笑んでくれたので俺の機嫌は猛スピードで直った。
いっぱい食べる君が好きって顔しててべりきゅー。
確か彼の好みのタイプはいっぱい食べる子らしいから俺も当てはま……アッ、石投げないで…!
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