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「…ねむ……」
夕飯も食べ終わって、三人が寝支度を一通り終わらせてる間に来客用布団を敷き詰めたいい子な俺。もちろん歯ブラシ済。
特権として一番初めに布団に横になったわけなんだけど、ドッと疲れと眠気が押し寄せてきて寝落ち寸前である。ねむねむにゃんこ。
振り返って思えば今日は寝不足からか無駄にハイテンションだった気がするし、結構疲れた気がするし、朝からほぼ何も食べてなかったから血糖値が爆上がりしてんのもあるかもね。
米粒程度に分析しながらうとうと夢と現実を行ったり来たり。
何度かあくびをして、いい感じに手足のひらがあったかくなってくると誰かが部屋の中に入ってきた。
「君、ド真ん中で何してるの。邪魔だよ」
「…ぁえ…、さあやかくん……? んふふ、…かっけーねえ……」
重たい瞼を開けた先に映ったのは天井ではなく、首に掛けたタオルで髪を拭く爽やかクンの尊顔。
視界はぼやぼやしてるけど、それでもカッコよくてはしゃいじゃうね。カッコイーきゃっきゃ…。
「…爽やかクン! おかえり!」
ぽた、ぱたた、と面を伝って肌に触れた水滴。冷たさに一気に覚醒し起き上がると、扉前に親友と転入生クンが見えた。
爽やかクンは頭突く前に顔を引いてくれたよ!
……ん?
転入生クン…?
「誰??」
「誰って"転入生クン"だけど」
親友の隣に佇んでいたのは自称転入生クンの初対面な美形さん。
整えられた濡れ羽色のサラツヤ髪にはあのボサ髪の面影もないし上手く合致はしないけど…意地悪な口許には面影。
そして導き出される答え。
「寝癖だったの!?」
「どう考えても変装だろうが」
あくびをかみ締めた親友に訂正されちゃった。
「つか改めて見ても高校生が着ぐるみパジャマな…。そこまでくんならモモパンマンで統一しとけよ」
「だったらだったで馬鹿にするっしょ」
「なに着てても馬鹿にするけどな」
「この子認めたよ。しかも回避無理ゲー!」
ちょっと残ってた疑いは消え去った。
この美形は正真正銘の転入生クン! 外見は別人だけど中身は使い古された雑巾! それか牛乳を拭いたまま数ヶ月放置された雑巾! いいすぎたかもごめん!
「容姿は置いといて…よし、みんなもう寝支度済ませたよね。じゃあ怪談話しよ!」
視線だけで致命傷だけどガン無視で俺は話を続行。
「恋バナも考えたんだけどさ、君ら恋愛と無縁そうだし何ならここ男子校だし。だから妥協して怪談話ってわけ!」
ほらほら早く!
乗り気じゃない三人を布団の真ん中で円になるよう催促し、部屋の明かりを消す。
ロウソクはなかったからスマホのライトを円の真ん中に置いた。
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