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若干爽やかクンと取っ組み合いとしかけると、ライト付けっぱに放置してた俺のスマホから不意に着信音が鳴って。
一拍静止してから汗が吹き出した。パブロフの犬。
「魔王って一々古いな」
「いやあ魔王以外考えられないぐらいの一致でね。そんで20秒以内に出ないと人生終わるかもだからちょっと待ってて!!」
「そんな焦らなくてもいいんじゃない?」
「お願い離して! 俺まだ死にたくないよ…これで出なかったら今年20回目なんだ。今回はマジ埋められるかも」
腕を掴む手に震える手を被せれば、尋常じゃない取り乱しに少なからず驚いたのか拘束が緩まる。
その隙を見逃すはずもなく、俺はそのまま振りきってスマホを取り部屋を飛び出た。
「あい、こちら尋です」
『遅せえわ』
『やっほー尋!』
電話越しに聞こえる地を這うような声に一気にド肝極寒。
ぺしょぺしょ泣いたけど、その後ろで聞こえる本物の奇人の明るい声にほんのり救われた。いい塩梅…でもないね!
『いい加減テメェから連絡しろ。誉が煩わしいんだよ』
「うえん…頑張る…」
『今度また呼ぶからちゃんと来てね尋!』
「ひゅえぇえ」
『アホらしい鳴き声どうにか出来ねえんか』
『んはは、すきま風みたいでかあいいねー』
思わず漏れ出た鳴き声を揃ってバカにされちゃった…。
こあい…こあいよぉ…不良に絡まれてるよぉ…暗い廊下も怖いしで失禁しそうだよぉ…。
という冗談はここまでにして。
俺から連絡を取る前に不定期なお呼び出しがかかるもので。自ら寿命縮めたくない…! てのが一生言えない俺の心だったりする。
今回の通話も誉くんの軽い暇潰しだったらしく、心のお口チャックで会話してれば俺が話してる途中で一方的に切られた。満足したって。涙出た。
…しかも会話と言っても俺が通話に応じるだけで満足しちゃうらしいから毎度通話時間は1分にも満たなかったりする。
無駄に冷や汗かき損だし、識くんも高確率で話に参戦してくるから心臓に悪い。
「…ぅう…」
たった1分未満でみなぎってた生気を吸い取られた俺はふら、と静かに部屋に戻った。
ら、三人とも穏やかに睡眠中で目を擦った。面が邪魔して届かない……。
や、正直俺も眠たかったからそこは良しとして。重要なのは俺の部屋なのに空いたスペースが端っこしかないのどーゆう了見…!?
端で寝てやるもんか、と親友と爽やかクンの間に入り込んで、毛布に潜り込めば絶大な安心感。
実際は両隣りに曲者だけど怖い夜には頼もしいね。
そんなこんなで両側からの体温に迫りくる睡魔の中。
識くんたちに通ずる何かを感じる二人は当分お泊まり会に招待しないことに決めた。いじめっ子属性……。
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