え?

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タ、タ、とペースも呼吸も乱さずに駆ければ見えてきたガラス張りの巨大ドーム型温室。 ここは特別専用だとかじゃなく誰だって自由に出入りできる言わば二十四時間営業コンビニならぬ植物園! 中にはちょっとした休息スペースも設けられてるし、様々な草木や花の緑豊かが目に優しい。 俺調べだと見るからに疲労困憊しきった教師や浮かない顔の生徒が頻繁に出入りしてるように思う。 ポピュラーな図書館は結構ウェイウェイ系の生徒が多いし、美術室は何かに狂ってる人しか居ないし、屋上は基本不良クンとかの溜まり場だし、ICTルーム物置部屋空き教室なんか色んな意味で以ての外。 ヤることは部屋でヤッてほしいね。 だけど温室に限ってはそんな人たちが寄り付かないから、きっと温室は疲弊した人らの憩いの場所みたいな! 自動ドアをくぐればガラス張りの天井から射す光を植物たちが気持ち良さげに浴びててにっこり。 そのまま歩いて行くにつれて聞こえてくる「メェ〜〜」なんて鳴き声と「う、うわっちょっとやめて! どうして君はいつも俺を引っ張るの!」と、必死に抗議する声に軽く笑っちゃった。 「あっ奇戸くんおはってちょっわわ、っわあ!!」 どしん、と音を立てて、俺に挨拶をしてくれたドジっ子クンは足をもつれさせて尻もちをついた。 羊が鳴きながらドジっ子クンを心配してるけど大方君のせいだね〜。 「んははっ相変わらずのドジっぷりだね。怪我してない?」 「ウッ…毎回情けないとこ見せてごめんね奇戸くん。大丈夫」 差し出した手にしなやかな指先が乗る。 そのままぐっと引き起こせば申し訳なさそうに笑われた。キャーーー笑顔眩しーーー!! 笑顔に翻弄されつつ。さっきの反動で落ちた史川(ふみかわ) (あまね)の名前と顔が刷られた生徒手帳と、ついでにいちごミルクをドジっ子くんに渡した。プレゼントフォーユー。 「あ、いちごミルク……はは、ありがとう。今度俺もお返しするね」 「え………えっ!? ほんと…!? やったやった、やったね羊!」 まさかのお礼にパッと湧き出た喜びはすぐ側の羊に向いた。メェ、とか面倒そうにあしらわれたけど俺は全く気にしない! だってね、ドジっ子くんって実はピアノがものすごい上手なんだけど自分の奏でる音が嫌いで中々に弾いてくれない。 し、ムリに弾いてと強要されると吐いちゃうプラス他人の前で絶対にピアノに触れないのコンボ難儀。 なんだけども俺にだけ特別に時々披露してくれんだよね。そんでそのときの合図? 隠語? みたいな単語がお返し。 つまりは今度またピアノを弾いてくれるらしいてこと。テンション上がっちゃうよね!
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