モモパンマン

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「…───名前は、」 「すみませんはようございます!! 遅れて!!」 あ。 って気づいた時にはもう遅いってのは何事においてもよくあると思う。小林製薬。 つまりテメェは何を言いたいんだって言われると、漂ってきた謎に覚えある冷気に俺は見事石になったよ。 振り返ること数時間もない数分前。 転入生が来るって話で昨夜は就寝時間ちょっと前に寝た俺はふつーに遅刻しちゃって。 日々の原動力こと朝飯を逃すことに半泣きで身支度を済ませ、朝食抜きのせいで少しバテたり清掃員さんに挨拶したり途中で宗教勧誘に合ったりで2-A到着。 遅刻したことは声量と気合いと愛で乗り越えよう! いざ尋常に大きく肺に酸素を取り入れて扉を開けて今。 はい要約振り返り出来て偉いね。 でも前の扉から教室に入ったことはマイナスだバカ野郎!!! 自虐やめよ。 それよりも、と声の主はどこだろうと見渡してみたけど誰もいない。 見えるのは呆気に取られた担任のホストンと生徒たちのみ。 んじゃ、と少し下を見れば少しボサついた髪を発見! もうちょい下げれば髪で隠れてる箇所以外の造形は見る限りキレーな子が俺を見上げてた。 前髪鼻根にかかるぐらい長いけど目え見えてんのかな? アでも制服は着崩してんだ。 てかちっさ。 「喧嘩売ってんのか」 「っっ…は!」 漏れちゃってたのか、と面の上から口を塞いだけど一歩遅かったらしくて転入生クンぷんぷんドリーム…! でも吐き出した言葉は戻んないからね。 気持ちを即切り替えてパーカーのポッケからある物を物色し、その整った手のひらに一粒ちょんと乗せた。 「ごめんね。悪気はなかったんだ!」 お礼はいいんだよ、へへ、とちょっと笑って。 「……テメェやっぱ俺のことバカにしてんだろ」 大気圏突っ切るような予想外の言葉にぱちっと瞬いた。 「…ぇ……えなんでそうなんの? モモパンマンキャンディー嬉しくないの? しかも桃だよ? 嬉しいよね?」 「信者かよ」 「君もモモパンマン教に入りませんか?」 差し出したまま取られない手のひらと無言。 俺の心はついにバッキリ真っ二つに折れちゃった。 互いに黙って見つめ合って数秒。 唖然から戻ったホストンが「いいから席つけ」そう折れた俺の心に松葉杖をくれた。 さすが元カノ全員メンヘラ化させて毎度殺されかける男。ナイスフォロー……! 軽く笑われながらも廊下側最前の席に着くと自己紹介はすぐに再開された。 彼の名前は(よもぎ) (けい)。そんで甘いものと馬鹿なやつが嫌いなんだって。 馬鹿な奴、で目が合った気がするけど俺は気にしないよ! んはは! しわピカ。
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