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「んーーんー、ん。今日も健康状態に問題なし」
ウキウキ気分のまま柵の中に入って一匹一匹の羊たちを確認してボードにチェック! 全頭で三匹。
…にしても全寮制の男子校に羊が居んのっていつ考えても摩訶不思議。
単に理事長が羊を見れば誰だって癒されるよね、なんて理由で居るだけだけど。
親友と同じDNAが流れてるだけあるある。
羊の名前一覧プレートの横にボードを戻してから手洗いして、俺は一連の流れを見守ってたドジっ子クンの元へ駆け寄った。
本来は羊の世話は生徒会のお役目じゃないんだけど、今までお世話してくれてた子がちょっと休暇中でね。
「…奇戸くんって俺と二人きりだと普段より静かだよね。雪柳くん達の前だと元気なのに」
ベンチに腰かけた彼が俺をぼうっと眺めて言った言葉にほへーと思う。
パキリ。いちごミルクのキャップが開けられて嚥下音。
俺も隣に腰かけて、ベンチに置いてた袋からおにぎりを取り出した。
「静かな俺やだ?」
面をドジっ子クンの居る向きにズラして、包装を剥がして大きな一口でかぶりつく。
パリパリ、と音を鳴らして海苔を噛み千切れば広がる食べ慣れた味に頬がゆるゆる。
何度食べてもこの学園の売店おにぎり最高。
海苔と少し濃いめのツナマヨがパラつきつつもしっとりとした米と合わさって………ァ、成り行きで食レポしかけちゃった!
無言で食べ進めて、麦茶も喉に通して、また食べ進めて。
それを繰り返しておにぎりが残り一つになったとこで、ドジっ子クンはやっと口を開いた。
「ごめん、ちょっと意識飛んでた」
「寝る子は育つよ〜膝でも貸そうか?」
…お、深いため息。
普段なら笑って流してくれるのになと考えあぐねながら最後のしゃけにぎりを喉奥に落として、麦茶を呷って、完食。
俺はすぐ面を元に戻して様子のおかしいドジっ子クンを見た。
……およ。およ、およよよよ?
「ドジっ子クン初すぎ。モモパンマンに膝貸すって言われて照れてんの君ぐらいだよ!」
瞼にかかるくらいのアッシュグレーの前髪の奥の顔が赤みがかっててニヨニヨしちゃう。
こーゆう反応ってこの学園だと滅多にお目にかかれないから好きだよ俺。大抵の人たちは色恋駆け引きに慣れちゃってるからね。
「…キミだから照れてるんだけど」
「あーわかるよ、友達同士だからこそ照れちゃうときあるよね。俺はないけど」
ドジっ子クンの照、れ、屋、さん〜。
親戚並みに小突けば赤みの帯びた頬は失せ、仕方がないように笑い返された。イケメン対応…。
清楚な顔容にドキマギしつつ俺はおしぼりで両手を拭いた。
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