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風紀室は生徒会室の丁度真下の階で、普通に距離は近いし道が複雑ってわけでもない。
それなのに誰も行きたがんない理由はたった一つだけ。
互いに嫌い同士だから!
生徒会と風紀が犬猿の仲って如何なものかとは思うけど、存外マジメな話し合いの時に口論してんのは見たことない。
俺が2年の中盤まではまあまあ仲良かったと思うんだけどねー。
それはそうとして。
ドンドンドンドンドン!!
「生徒会書記の奇戸尋でーーーす!!」
さっきから風紀委員長サマどころか誰も出て来ない。
あんなに仲良かったぢゃんアタシたち…! 心の中のギャルが顔を出し始めたから仕舞っておいた。
でも手ぶらで戻れもしないし、どうしよっかなと逡巡し始めれば開かずの間が開いた。
「ウッッワ………ァー…情事中だった?」
「…どこをどう見たら……」
アイデンティティな昭和七三分けは崩れて眼鏡もいずこ。普段はカッチリと首元まで締められたシャツも緩んでて完璧情事中!
どうせ中には顔を真っ赤に息潜めてる子が居るんでしょ!
「いくら風紀委員長サマと言えどTPOを考えてくださいよ。ましてや風紀室で…このハレンチ!」
「仮眠、していただけなのだが…」
あ、ふよふよ飛んでる綿みたいなのはそーゆ…。
口調もどこか歯切れ悪い風紀委員長サマは誰かの性癖をねじ曲げそうで、彼の尊厳を守る為に俺は風紀室に押し入った。
つい一瞥した中はやっぱ生徒会と違って個人の私物がすっくない。私物って言ってもアイマスクとか飲み物ぐらいだしさ。
また少し視線を逸らせば白のロングソファからブランケットがズレ落ちてて、多分あそこで仮眠してたんだろね。
そんでこんだけ見渡したのに風紀員の姿はゼロ。そこで、だから珍しく仮眠してたんだって俺は納得した。
「仮眠中騒いでごめんね! 目通して承認してくれれば帰、」
ぽす、と左肩にあったかい何かが乗る感覚。
固まってからそろりと見やればダークブラウンの髪。
ワオこの展開支部でも二次創作でも少女漫画でも100回は見たよ。
俺は遠くを見つめた。
風紀委員長サマの親衛隊に見られたら呼び出しリンチ確。
「あの風紀委員長サマ…いつどこで誰が見てるかわからないから一瞬で離れてくれたらなって」
「…ン……」
「耳元で色っぽい声出さないでくださいよォ〜! 俺ボコされちゃうよ〜! モモパンマンがリンチって何事〜!」
「うるさいな…」
不機嫌面ながらも上げてくれた顔に申し訳ないけど、俺の安泰と天秤にかけたら…そゆわけでね。
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