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「アイツ今日も静かじゃね」 「どうでもいいけど何かあったんじゃないかな」 「おかげで昨日今日すげえ過ごしやすいわ」 「例えるなら9月上旬だね」 「笑う。例えが的確」 「こういう時はそっとしておいてあげよう」 「面倒くせえからほっとこ、な。りょ」 なに、この子ら。 体育の授業真っ只中。横でパス練してる悪童コンビが談笑してんだけど、特定の人物の名前を出さないとこに悪意感じた。 こんな時に親友が側に居てくれたら縋りついて俺も対抗したけど、アイツは今日フケてやがる。おかげさまで一人余って俺だけ壁打ちだよ! ダムダム。 「…あっっ…つ……」 元々代謝が高いってのに体育で長袖ジャージは軽率に自殺行為。 腕は捲ってても首まで閉めてるから暑いしくすぐったい! 面も着けてるから余計にね。 昨日九十八に開けられたばっかのピアスも熱もってて……今が夏じゃなくてほんと良かった。 とそこで。はた、と連想ゲームの要領で昨日のことが思い起こされて顔面が熱くなった。 怒りだ。底知れない苛立ちだ。この暑さの原因となった出来事への…! 客人招く時はファブんのが常識だろーが! ダム。 腹に乗るわ手首縛るわちゅーするわ! ダム。 人の首を骨みたいに噛んでさ! ダム。 ぬあにがいい匂いだ嗅ぐんじゃねー! ダム。 ド健全な生徒会書記に痕残しやがって! ダム。 あんッッッの脳みそゆるふわヤローめ!! 「うぎゃっ…!!」 ダム!! と一際大きく壁に打って跳ね返ったボールがデコに直撃した。 転倒は免れたけどズレた面を直せば「どんくせ」半笑いの声。 俺は我慢ならずバッと首を横に向けた。 「さっきからなに転入生クン。俺に惚れた?」 「ゲロるぐらい気色悪いこと言うなよ」 「このゲロガキサイテーすぎる…」 「蓬が最低なのは今更だよね」 「は? テメェには一番言われたくねえわ」 「えなに、君ら仲良し営業だったの?」 「うん? 僕と蓬はクラスメイトだよ」 「遠回しに距離取られたんだけど。ざけんなよカス蹴っ飛ばすぞ」 「モンペ並理不尽…君も言葉を包んでよ!」 「クレープに?」 「餃子の皮で」 「体育中に飯の話題出すな」 「カレーハンバーガーからあげ肉まんコロッケ」 「死ね」 「はいはい俺は死なない定期」 「今日のお昼ご飯はコロッケ定食頼もうかな」 「宿木お前絶対O型だろ。だからO嫌いなんだよ」 「B」 「俺B型嫌いだわ」 「んは、発言コロってる」 「語呂がラリってるみたいだね」 「ラリってねえわ。テメェもどうせBなんだろ」 「O」 「Oみてえな面しやがって…」 「お面ね」 「蓬こそ何型なの?」 「B」 脳直会話をだらだら続けながらボールは行ったり来たり。時に俺の頭に突撃。 死んでいく脳細胞を撫で、俺は体育館窓から青空を見上げた。快晴!
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