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「目、赤いな」 「んえ?」 もっちゃもちゃもちゃ。 口いっぱいに肉巻きおにぎりを頬張って俺は首を傾げた。 この通り脳破壊想像のせいで失せてた食欲は余裕で戻ってきた! なんなら失せる前より湧いたまである。 お弁当の中身は肉巻きおにぎり、ミートボール、クリームチーズ卵焼き、ミニトマト、ほうれん草の胡麻和え、ピリ辛きんぴらごぼう。 この宝石箱以上のタッパーとおにぎりを親友の尊顔から渡されれば当然戻ってくるってもん! 気分は夢主。 んでなんだっけ。目が赤い? 「ほんはほほはくえ?」 「そんなことある。あと汚ないから飲み込め」 「ほえん。……ん、親友が気になるって 相当だね」 口の中の物を喉奥に落として、唇端についたゴマを親指で掬ってぱくり。 基本親友は人の変化に気づかないタイプの人種だ。 幼少期の帰り道、小学校一の優しくて可愛いマドンナだった子がある日綺麗な花の髪留めを着けて『弥枝(やえ)くん、どうかな?』そう親友に訊いてみたところ、親友は真顔で『なにが?』と言って退けた。 蛇足で言うと俺の初恋はその子。 ついでに同クラだったし一つ年下の親友に惚れてたってその日知って枕濡らしたりもした。 「それに唇も怪我してる」 「ドキッ」 「口で言うなよ」 軽く下唇に舌を伝わせればカサブタに触れる。 ちっちゃな痛みとかは慣れてるから意識外に飛んでた失態…! 水を飲みつつちょっと思案。面は左隣に弁当の蓋と一緒に置いてあるしまだ食べ終わってもないから着けられない。 どーやって誤魔化そっかな。 「九十八?」 「ゴボァッ!!」 「汚ね」 「親友゛…!」 びしょ濡れになった口元や首元をハンカチで拭って非難の目を親友に向けた。 普通は察してても本人には訊かないでしょ。訊くなよ! てか鼻にも少し入って激痛……。 「何その反応。ついに食われた?」 ヘラ、と笑った親友にまた軽く噎せながら、ここまで察せられてんならいいかと俺は開き直った。 口の硬い親友のことだしこーなれば愚痴でも聞いてもらおうじゃん。 一昨日、昨日の不憫な俺の話を…───。 結果。 学食首輪連行事件の話をかい摘んで説明すれば爆笑された。 もう盛大に大爆笑。多分今年入って一番の笑顔だった。今年まだ始まって四ヶ月くらいだけど。 上乗せで耳の処女を捧げた話をすれば一段と笑われて半泣き。 引き離されない為に仕方なかったんだよ! て逆ギレしても「お前が俺の傍に居たかったんだろ」なんて真顔で返された。 慰めに淡い期待をしてたのに爆笑された上この言い分はないよ……! でも少し泣いたら卵焼き一切れ分けてくれたから全然許した。特大好。
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