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「んでね。聡い親友にはもうわかるだろうけど」 そこで区切って第二ボタンまで開ければ親友の声は呆れたような声へと様変わり。 「事後じゃねーか」 「事後じゃないでーす」 そう、こんな勘違いをされないよう俺は今日首元を死守してる。だけど明後日までは残りそうで鬱! シャツのボタン締めてきんぴら食べた。美味。 「そゆことで目が赤いのも唇怪我してんのも想像通り。もうちょい言うと九十八の部屋に催淫スプレー残りがね」 最悪だよな〜、て笑ってみたけど返事がない。ただの屍のようだ。 なんだなんだ親友、柄にもなく俺を心配してくれてるのかな。 …え、呆れてるだけ? 知ってる。 今度はおにぎりにかぶりついて大発見。 塩おにぎりだと思ってたけど、まさかの具あり鮭フレーク入りだったことに…! 何も無いって思ってたのに何かあった時って嬉しーよね。 「抵抗したんだよな」 もう一度おにぎりを食んで顔を上げると、澄んだ灰白色の目が俺を見つめていた。 春風が間を通り過ぎて、俺は喉を詰まらせかけた。 「んぐっ、…!! …ぶっ、……し、しんゆ、…っぐふっ!!」 堪えきれず含み笑いが飛び出したけど、何とか口から米粒は発射せずに全て飲み込んだ。 一瞬にして引いた顔に手を伸ばし、その鼻についてたおちゃめな米粒を取ってぱくっ。 「ハァハァ…鼻に米、ついてたよ」 「……うわ」 「どっちに対して? 俺が米食ったこと? それともウィンク?」 「鼻息」 「盲点」 そこだったか…と残りの弁当を口の中にかっこむと、親友も疲れたのか弁当を食べ始めた。 きっと米粒も親友のあまりのカッコ良さに鼻に着いちゃったんだろーね。 だけど残念、親友の目も口も鼻も顎も眉も手も首筋も四角い爪も全部俺のものなんだな! 寝ても覚めても超素敵! そんなこと言ったらゲンコツ飛んできそうだから言わんけど。 くだらないことを考えながら黙々食べ進め、水を飲みきって、俺は両手を合わせた。 「ごちそーさま! 親友マジあんがとね、めっちゃ美味かった!」 「別に。俺の自己満だから」 「し、しんゆー…!」 「犬にオヤツやんのは飼い主の役目だし」 「正直親友にだったら喜んで飼われたい」 「きも」 つれないこと言っちゃって。俺ら遺影はツーショにしようって熱い抱擁したじゃん。 うふふ、とツンデレな親友に破顔したほんの隙。俺の嫌いな音ランキング第三位に入る音が木陰から聞こえてきた。
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