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「ぁッベ」
焦った声を上げたのは片膝をついて牛柄のスマホを俺に向けてる眼鏡。
一口に眼鏡と言っても、結構付き合いの長い眼鏡で。
いや、付き合いの長い眼鏡ってなんだ。
重要なのは俺は今その眼鏡ことパパラッチくんと目が合っている状態てこと。
面も着けてない素の状態で、バッッチリと向き合っている状態で。
「やー、あね。偶然昼飯惜しんでの日課のネタ探ししてたら見覚えのあるギャグ組が人気のない所に居るじゃん! これはスクープ間違いなし! って身を潜めて覗いて見たらまさか鉄壁の仮面がこうも」
なんか早口に捲し立ててるけど俺の耳にはもう入ってこない。今までここに来たことなかったのに、だとかの言葉はなくって。
考える余裕もなく準備してなかった心臓が急速にバクバクとしだして、じわ、と首筋が熱を持った。
そしてすぐにその熱は一気に範囲を広め、心臓の音が耳元で聞こえてるんじゃないかってくらい大きくなった時。
「て、うわ。真っ赤」
呟かれたその言葉に全身が熱くなってドッと汗という汗が流れた。気がする。多分。絶対!
ついでに頭の中が真っ暗というか真っ白というか真っ赤になって言葉が出てこない。
そもそも呼吸出来てるのかも危ういし、体も縛り付けられてるみたいに動けなくて顔も隠せない。
でもその間も眼鏡の奥の赤茶の目は俺を見てて。
「尋」
前触れもなく目の前がふ、とほの暗くなった。はちはち瞬いて、顔には慣れた軽い重み。
そこでぎこちなくも顔に手を伸ばせば面の感触を感じた。
………なるほど親友が着けてくれたんだね。ヤダ惚れちゃう…っ!
まだ熱い肌は知らんふりして、俺は普段通りにパパラッチクンの元に向かってその手からスマホを取り上げた。
手馴れた手順で写真を削除! ゴミ箱からも削除! それから唖然としてるその手元にスマホを返却!
「んん! あのねパパラッチクン、俺写真苦手だって言ったよね。それに撮るなら親友を撮ってってば。そんで親友の素晴らしさを学園中に知らしめて!」
「ふざけんな」
「あ、もう既に知らしめられてるか」
そもそも盗撮しちゃ駄目だかんね。
叱るように額を人差し指の腹でこつんと突くと、その手をギュッと両手で握られた。
「今の顔なに!?!?」
「うっわ!?」
「えーーー!! お前のこと常々面白い奴だなとは思ってたけど実は純情系だったの!?」
結構強めに引っ張られ、顔面が目と鼻の先。
おお…やっぱりどちらかと言えば盗撮される側の顔立ちだ。
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