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「次からは絶っっ対忘れないから! ほんとごめん! すみません! 許して!」 顔の前で両手を合わせて恭しく切願。せめて一週間パシリで許してほしい反省文はもう懲りてっから………!! と、滅多にない全身全霊の謝罪をしてから瞑ってた目をそろそろ片方ずつ開いて二度目の驚き。 なにやら煮え切らない表情で不審が入り交じる憤りのような。そうは言っても表情に変わりはないからひたすら不思議なお顔。 …なんだろ、他役員や風紀から恨み言の一つや二つでも言付かってたりとかあんのかな。 スライディング土下座の準備しよ。 「約束事をすっぽかす奴じゃないだろ。ましてや重要な会議を」 続いて告げられた言葉にきょとり。 今の俺を絵に描き出すとするなら目は点だと思う。面着けてるからわかんないだろうけど。 ……て、いうか。 「んふははっ…! ええ、先生ってば俺を買い被りすぎすよ! 確かに俺は品行方正な生真面目生徒だけど忘れちゃうことはあるよ。人間だもの」 みつを。だとか笑えば変な顔が崩れて歪んだ。 「品行方正かは別として約束や期限は何がなんでも守るだろ。俺が見てきたお前はそういう人間だ」 「いやいや守らない時もあるよ」 「守れない時じゃなくてか?」 「あ、そだね。ド忘れとか寝過ごしちゃったりとかね」 「だとしても連絡ぐらいは寄越すだろ。アイツらに代わって俺が連絡しても出なかったよな」 「忘れたあげく居眠りこいてて…その後ちゃんと連絡したよね。寝てて気付きませんでしたすんません、って! ほんと悪いと思ってるんすよ俺」 次は絶対ないから、と付け足せば畳みかけるような言及の言葉はひたりと止んだ。 こんなにも身勝手なやつの心配をしてくれるなんて良い先生だよね〜…ラブ!! 「やっぱ先生は仕事熱心でいい教師だね。でも神に誓って何もなかったから心配しないでよ!」 「………まあいい、これ以上なにを言おうが頑ななお前のことだ。埒が明かないだろうからな」 「んふ、頑固って言っちゃっていーんだよ」 揶揄するように笑んで「そんじゃ用事もあるしもう戻んね!」ひらりと手を振って、挨拶の返しを受け取った俺は小走りで去った。 てってけーと左肩にかけてたリュックを整えながら放課後の予定の組み立て。 親友は明日の休日。都心に降りて趣味の写真撮影に行くから早めに帰るって言ってて……そうだそうだ。 生徒会は新歓で開催するレク内容の軽い振り返りだっけね。ならこのまま生徒会室直行だ! 即刻決まった放課後の予定と微量の罪悪感。 でもやっぱ俺は神様なんか居ないと思う。幽霊はいると思うけどねー。
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