料理

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それから会計サマとあらかたの仕事を夕時までお片付けして、時は刻々と経て土曜。 外はぽかぽか陽気でピクニック日和〜! …だってのに制服の上からエプロンを着け、俺は調理室の実習台の前で仁王立ちしてる。使用許可はもらってるよ。 向かい側には転入生クンと副会長サマ。俺側には天パクン。と、ここには居ないけど会長サマ。 メンバー分けは公平なくじ引きの結果で、副会長サマはご満悦そうだった。 「よし、絶対美味いの作って地に這いつくばらせて許しを乞わせるか!」 「うんやりすぎ!」 乗り気ではないけど一度決めたからには遂行するのが俺のポリシー。 こうなれば美味いサーターアンダギー作って親友を惚れ直させよう! 両腕のパーカーを捲り、気合を入れて手を洗えば「あ、ソレ」と、表情の見えない顔が俺の右手首を見下ろしてた。 そこには線を縦に引いたような傷跡。 「あー気にしないでいいよ! それよりほら、君も会長サマがおつかいから戻って来る前に洗って洗って!」 そう、会長サマはいま必要不可欠な黒糖が微妙に不足してたから買いに出てる最中。 全員同意の上でのジャンケンだったから文句は一つも垂れてなかったけど、表情からは面倒ってのが隠しもせず伝わったよね! 「景…あの私、実は料理経験がないのですが」 「あっそ、俺結構得意だから」 「ですから味見だけは任せてね」 「食うだけかよ。洗い物しろ」 「ふふ」 …一番ノリノリなのきっと副会長サマだなこれ。 料理上手な従兄弟と二人きりだから心配事は何もないんだろね。 対して俺らのチームは三人も居るってのに安心どころか不安要素しかない。一人は味覚音痴、一人は火加減下手、一人は不明……ダメだこれ!! 「生徒達に捕まっていて少し遅れた。それじゃあ始めるか」 既に行き先に不安を抱けば帰ってきた会長サマ。その格好は俺ら同様に制服の上から黒のエプロン。 休日の夫ver.会長サマ(SSR)と休日の購買で遭遇した生徒らが沸き立つのもしゃーないね! 想像上の生徒に完全同意し、俺は持参のレシピ帳を付箋のページまでぱらっと捲った。 「そんじゃまずボールに卵と砂糖…───ちょちょちょ、卵は洗わなくていいし天パクンはなにしてんの!?」 「砂糖入れてる!」 「分量をご存知でない!?」 「甘ければ甘いほど美味いだろ?」 ドバーーッ!! と銀のボウルに未開封の黒糖を半分も入れた糖尿病予備軍の腕を、洗剤で卵を洗い出した会長サマの腕を掴んで絶叫。 心底不思議そうな目を向けてくるなよ会長サマ。卵は食器じゃないんだわ。
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