料理

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「落ち着こう。まず落ち着こ? 卵はそもそも洗わないし、砂糖とかは分量守んないと地獄見るわけね。美味しい料理を作るにはレシピ通りにしないと!」 「なあモモ太、手が震えて卵の殻入ってんぞ」 「モモ太? ソイツの名前は奇戸尋だろ」 「え!?」 「黙ってくれるかなギャラリー引き寄せマン」 妙に耳に残る騒がしさだな〜ってさっき振り返ったら扉の隙間から大多数の光る目が見えて心臓消えた。 十中八九会長サマが連れて来たんだろうね。心スポ行って霊を連れてくるノリで連れて来ないでほしい! 「殻を除いて、と。砂糖と卵混ぜるの天パクンお願いね! 会長サマは俺と、」 「ウワー下痢みてえ!」 「…。」 「会長サマ無言で身を引かないで…あの子と二人きりにしないで一緒に薄力粉の分量測ろ…」 後ずさった腕を引き、薄力粉の封を開ければ向かい側から叱咤の声が上がった。 「テメェらうっせえよ。どこぞの騒がしいナンヨウハギだよ」 「私はほぼ毎日あのうるせえ奴らと過ごしていますが景もそのうち慣れるよ」 「慣れなくていいことも世にはあんだよ」 転入生クンチームは手際よくもう生地を丸める作業中。その点俺らはまだ卵と砂糖混ぜただけ。 …でもね、何事も早ければいいってものじゃない。丁寧だからスローペースなんだよ。孫心込めて誠心誠意込めて作ってるね。 そう、丁寧だから! 「アッ飛んだ!」 「そんなガッシャガシャかき混ぜてたらそりゃそう。ひっくり返さないでね!」 「おい奇戸、測り終わったが次はどうすんだ?」 「え、ああ…ああ!? ゼロが一桁多いのはアンタの買い物だけにして〜〜〜!!」 「お前はゼロが一桁少ないだけだろ」 少し目を離した隙に薄力粉で辺り汚れてるし会長サマの顔にも付着。 ほら聞こえる? 背後からパシャパシャ………。 ウワァァ…と嘆きながら薄力粉を減らして、天パクンにオーリブオイルを頼んだ。 けど、また後先考えず注ぎそうだったから結局俺が入れた。 「ハァ…ハ……嘘、この15分間で俺ら三人で生地も作れないの? 人間初心者?」 「人間初心者はお前だけだろ」 「ちくちく言葉」 でも比べちゃだめだよね。 うちはうち、よそはよそ。めげないしょげない泣いちゃダメ。諦めたらそこで試合終了。 俺らなら出来るよ…! 気合いを入れ直して、天パクンが混ぜてくれた液に薄力粉とベーキングパウダーを入れ、気合を入れて練れば生地がようやく出来上がった。
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