料理

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手持ち無沙汰で俺の捏ねたサーターアンダギーを三個くらい袋に詰めてれば、審議役を押し付けられてた会長サマの審査が終わったみたい。 袋に詰めたのはもちろん親友用! バレンタイン当日の小学生並に可愛くピンクのリボンでラッピングしたよ。 「そうだな…」 何やらそれっぽく小難しい顔だけども、実は誰一人として気にしてなかったりする。 転入生クンはスマホ片手に端から食べても気にしてもないし、口火を切った天パクンは何も気にせず幸せそうに食べてる。…ちょっと生暖かい目で見ちゃうな。 そんで俺と副会長サマは巻き込まれだしさ。 言わんけどね。 パシャシャシャシャ…!! 顎に手を当て、長く艶のあるまつ毛を伏せる会長サマは大人しくしてればものっそいカッコイイ。 話さなきゃただのイケメンだね。 ア嘘、喋っても腰抜かすほど超イケメンだわ。 どんだけの美形かを俳句で言えばガチムチも囁かれれば腰砕け。 パシャシャシャシャ…!! 背後から聞こえるシャッター音はガン無視が世のため俺のためだったりする。 ……てゆーか顔色がどんどん青ざめていっているような。 「…………胸焼けがエグイな」 「か、会長サマーーーー!!!」 憔悴した声を皮切りに俺は全力疾走で近場の自販機で水を買い、顔面蒼白な会長サマに手渡した。 「…ありがとう」 「!!!!?」 そしたら驚き。借り猫の如く素直にお礼を言われて白目剥いて泡吹いてぶっ倒れそうになった。 コイツが素直になる時は限界の時のみなんだよ…!! 「奇戸って足速いんだな。オレも速いから今度走ろうぜ!」 「新歓、新歓でね! 今はコイツを介護しなきゃだから! 副会長サマ、扉の向こうの子から胃薬!」 「扉の隙間から胃薬を持つ手が伸びてるって結構奇妙…。ありがとうございます」 「新歓……? ア月曜に配られたヤツか。お前も覚悟しろよ蓬!」 「俺年上なんだけど。敬語と先輩つけろよ」 「寝首掻いてやるからな蓬!」 「ただの殺害予告じゃねえか」 仲良さげな転入生コンビの会話を耳に、胃薬を副会長サマからラリー式で会長サマに渡した。 ら、またお礼を言われて俺が具合悪くなってきた。 素直じゃない人間が素直になる瞬間は時と場所によっては恐怖でしかない……!! ダウンしてる会長サマを心配しつつ、俺は落ち着かない心のまま余ったサーターアンダギーを人数分小袋に分けた。 俺もあてられたのか吐き気を催してきたけど風紀委員長サマの時といい今回といい。 弱ってる人間の姿は見たくないね! 俺の具合まで悪くなっちゃうょ……。
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