料理

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あれから胃薬を服用しても体調が優れなかった会長サマは同室の副会長サマが付き添いで帰って、残った二人も学食やスーパーに行くやらで自由に解散した。 俺はもちろん親友の部屋に直行中。 「…んふ」 折り畳んだエプロンと袋を手にした右手を見下ろしてにんまり。 会長サマも最初の何口かは褒めてたから美味しさの保証はバッチリだよ。 さてね、どうせ俺の作ったサーターアンダギーは真っ黒カチカチだろって揶揄してた親友はどんな反応すんだろ! …や、まあ揚げたのは会長サマだけど。 「あれ?」 どうせならアンビリバボー! とか言わないかな、と右側のガラス張りの外。寮長管理の花壇付近で不穏な気配の二人組が目に付いた。 両目ともに1.5以上の俺はその容姿や漂う空気感に気が付いて、慌てて寮長室の隣の扉から花壇に飛び出した。 あの内の一人は識くんたちの下っ端だし、胸ぐら掴まれてた子は愛しのドジっ子クン!! 「ア゛ァ!? オメーの謝罪なんかどうだっていいんだよ!!」 速攻で駆け寄って目にしたのは目を瞑ったドジっ子クンと大きく拳を振り上げた生徒。いやーーーー!!! 心臓が宇宙旅行の旅に出かけながらもなんとかなれーーッ! とドジっ子クンを軽く押しのけ、勢いがかった拳を寸前で手のひらで受け止めた。 ジン、と骨に伝わる刺激は普通に痛い。 「あいててて………こら! 何があったのかは知らないけど暴力じゃ根本的な解決にはならないよ!」 手を離してドジっ子クンと共に一歩離れると、呆気にとられてから短時間で真っ青になった生徒は俺の肩を何度か気軽に叩くと不自然に笑い出した。 …あ。 「い、やいやいやいや暴力なんてそんな!! 少し言い合ってただけっすよ、マジなわけねーっすって…!! 史川も怯えさせてごめんなもう絡まねえから!!」 致死量の冷や汗垂らして脱兎の如く走る背を引き止めはしなかった。ただ三流DQN感凄いなとは思ったけどね! 隣からは混乱を隠しもせず狼狽してるドジっ子クン。何となく心当たりのある俺はだんまり。 とりあえず下っ端クンたちの俺への評判が地底並なことを再確認して体の向きを転換させた。 「ドジっ子クン大丈夫? どっか怪我してない? 俺が来る前に何かされた?」 「え……えっ、あ! だ、大丈夫だよ」 困惑顔をぴたぴた触れたり見たり訊く限り怪我はかし! 大丈夫だと頷く様子を確認して、頬を両手で包みながら俺はほっと息をついた。 暴力はダメだよねまったく。
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