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嫌がらない態度をいいことに頬を好き勝手しながら詳細を訊いてみると、単に絡まれていただけだったみたい。
ドジっ子クンが花壇で休んでたあの子の足を踏んづけて、謝罪はしたけど相手の腹の居所が悪く殴られそうになったって。
深刻なカルシウム不足!
Eクラスはいい意味でも悪い意味でも血気盛んな子が多いんだよね。俺も何度リンチにあったり面を外されたことか…!
口ん中に石入れられて殴られたときはご飯が三日ぐらい……そうだ、この前は天パクンと揉めて窓ガラス破損させてたっけ。
んや、でも裏を返せば元来何事にも全力で素直な生徒たちでもないねブラックジョークが過ぎた。
「奇戸くん、いい加減手を離してほしい」
「…ん? おっわ、おぉ……ごめんネ」
両手首を掴まれた拍子に意識を戻せば赤い顔が腕の間から覗いてて。あわ、と俺は慌てて手を離そうとして首を小傾げた。
今度は俺の両手首が離してもらえない!
ちょいちょい手を引こうとするけど逆に掴まれてる。
どーしたもんか、と再度見たドジっ子クンは何やら葛藤してるような顔でうっすら桃色を帯びてた。
母性のある女の子が見れば一発アウト結婚一直線だと思う。
「あのードジっ子クン?」
「んん…うんん…んんんん…………ご、ごめん」
「別に大丈夫だけど、どしたの?」
顔を赤くして唸るイケメンはこの学園じゃいい餌。最悪今晩のオカズにされかねない!
周囲に人目がないか確認して首を戻すと、今度はへにょっと困り眉になってた。
「ご、ごめん。気にしないで、えと、あ…あ! そう、その袋が気になってて!」
「えコレ? コレね、丁度さっき作ったばっかのサーターアンダギーだよ。三つあるから一個いる?」
「え゛っっ」
「味は会長サマが美味しいって言ってたから保証済み。安心して食べていーよ」
「へ、っ、あ、ありがとう…!」
袋入りのプラスチック製フォークとリボンを解いた袋を渡すと、ドジっ子クンは緊張気味に口に運んだ。
……味は保証するとか言ったけど、俺はまだ食べてないから実際のとこは不明。
だから気持ち若干緊張して見守ってればパッと灰青の目が開いて俺を見た。
「奇戸くん、すごく美味しいよ」
ッッッッヴヮッッ!!!!
カッ、と発光した笑顔が目元に直撃。じょ、浄化されちゃう…!!
混じり気のない純粋な反応ほど一番心にくるよねって話! こんな気持ちは飼育小屋の兎たちが小さなお鼻動かしてにんじん食べてた時以来だよ………わりと最近。
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