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「美味しいなら良かった。これで親友にも心置きなく渡せるよ!」
落ち着きを取り戻して、リボンを雑に結び直せば「雪柳くんより先に俺にくれたの?」意外そうな声で驚かれた。
この勘違いよくあるある。
俺らは確かにニコイチハッピーセットだけど何時でもどこでも一緒あなたが一番♡ なんてバカップル甚だしいことはない。
特に用事ないから、誘われたから、何となく、で必然的に一緒に居るだけであってお互い何でもかんでも優先ってわけじゃないよ。
俺は親友大優先だけど!
「親友んとこに行く途中で絡まれてんの見えてさ。見逃せるはずないよね!」
「そ…うだったんだ、ありがとう」
ガラス張りを親指で指せば表情を朗らかに頬を掻く姿に、んん? と思いかけた考えは即捨てた。
そんな言葉口走った日には各方面からフルボッコの未来のみ! 石どころか隕石ぶつけらられる!
「んじゃまたねー」
あらぬ方に飛んでいこうとする思考を捕らえ、俺はサッと花壇を離れてエレベーターまで直行した。
きっとあれが俗に言う天然タラシだろうな。絶滅危惧種認定の天然タラシ!
ちな親友の部屋は501号室で、丁度俺の部屋の一個下の階だったりする。
それに1号室の側にエレベーターが設置されてるからお泊まり時に親友が来んの早いのはそゆ理由。
リン、と音を鳴らして止まった箱から降りて、俺は501号室のチャイムを鳴らした。
すれば数秒待ち時間のあと扉が開いて。
そして。
そっから出てきた親友の姿に喉奥からヒュエッッッ…と意図せず変な声が出た。
普段通りの美顔の下。
白い首元に映える赤を見つけちゃって、俺は失神一歩手前の意識をギリギリで保った。
「な……………、なっななななっなな…!!! なっ、ななんっ!!?? なっ、お、おおおお前!?!」
「うっせ。なに?」
「なっなにっ、ナニ!? ナニはこっちのセリッえ、ううう嘘、え、え、か、かかっ彼氏出来たの!?? お前彼氏出来ちゃったの!!!?」
ヤバイ、ヤバイヤバイ気持ち的に心臓というか脳みそがシェイクされてる感じする!!! 脳みそシェイクジュースになっちゃう!!! グロい!!!
動揺が凄まじくて吃りまくって声量が調整出来ずにいると「一旦中入れ」と前からフードを引っ張られた。
「な、なし、っ、し、親友そそそそれって」
背後で閉まる音を耳に、白い首元に映える赤に釘付け。季節外れの蚊の可能性はゼロ。360度どこから見ても鬱血の痕。
誤ッ魔化しようもなくキスマじゃーん!!!
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