1.多分ここで死ぬ

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1.多分ここで死ぬ

パーティから追い出されるきっかけとなった傷は、思ったより酷かったようだ。 俺の名はジュード。タンク……所謂戦闘での盾役だ。 村の悪ガキリーダーに引きずられるように村を出て、ずるずると一緒のパーティで過ごし、もうすぐAランクに行けるというところで事件は起きた。 レッドドラゴン討伐ならうちのパーティでこなせただろうが、出現したのはレッドドラゴン亜種。炎属性と共に金属性を持つ数倍強い魔物だった。 防戦しつつ逃げようという俺の案は、リーダーの剣士……かつての悪ガキリーダーのケストによって却下された。 炎と短剣サイズのトゲを次々飛ばしてくる攻撃に、タンク役の俺は必死で耐えた。 しかし、真っ正面から俺めがけて飛んできたトゲに一瞬俺は怯んでしまった。そして運悪くそのトゲが腕の肉をごっそり削いでいく。 それをきっかけに俺の魔力で作っていた防御壁は崩壊、ケストは負傷、アーチャーと魔術士の助けがあって、どうにか撤退することが出来た。 その後Aランクのパーティーがその魔物を倒してきたが、ケストは俺のミスさえなければ自分達のパーティがあの魔物を倒し、ランクアップも出来た、と散々に俺を責めてきた。無茶を言い出したのはケストだが、負けるきっかけを作った俺に、パーティの他のメンバーも冷たかった。 「今まで臆病でノロマなお前の面倒見てやってたけど、もうここまでだ! 出ていけよ、ジュード!」 俺は着の身着のまま、怪我の治療も受けられないままパーティから追い出された。 絶望しながらも、あてどもなく歩いているうちに、体が妙にだるく熱い事に気づく。傷口は塞がらなく、嫌な匂いをたて始めていた。ろくに治療もしていなかった傷から悪い風が入ったのだとわかった。 しかしここはもう人里離れた村さえみあたらないような辺境。まともなヒーラーや薬師がいるとは思えない。それに治療代も俺は持っていなかった。 その辺に落ちていた棒を拾い、杖替わりにして、せめて死ぬ前に水位は飲みたいと俺は森を彷徨っていた。 (……水の香りだ。近くに泉がある) 死にかけのせいか敏感になっていた嗅覚は、水が近くにあることを告げていた。 (せめてそこまでは……) よろめきつつ歩き出そうとした瞬間ーーー 「キャーーーッ! 誰か助けてーーー!」
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