プロローグ

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 空中国家ルウ王国――通称“空中大国”と呼ばれるこの国は、その名の通り空に浮かぶ国である。世界に四カ国ある空中国家の中で最も栄えており、その権力は東西大陸にも影響を与えるほど。海の少ない世界の中で、ルウは水の豊富さにも恵まれていた。  しかし最大の特徴は、魔法である。国全体が魔力に包まれているルウ王国は、世界屈指の魔法国家であった。他の国や地域に比べ大気中の魔力が濃く、体内の魔力を消費しなくても魔法を使える。もともとルウ王国は、魔法の才能ある者たちが集まって崇められ、やがて王族となった彼らが政権を握り建国したのである。  ここで現在のルウ王家について、簡単に説明しておこう。  国王ローキィ・クラヴェス・ルウ。あらゆることにおいて決定権を持つ、国の最高権力者。彫りの深い顔立ちには威厳が刻まれているが、最近シワが増えたと王宮内で噂されてしまう(ちなみに本人は知らない)。  ローキィには決定権があるが、実際に政治を引っ張っていくのは執政官である息子二人である。完全な王政ではなく“王執政”という、国王と執政官による共同の政治が行われているのだ。つまり、 「食後のデザートは何がよいものか」とローキィが言えば、 「アイスクリームかババロアがよろしいかと」と執政官が提案し、 「よしではアイスクリームにしよう」とローキィが決める……といった具合だ。王執政についてはお解りいただけただろうか。  試しに、このやり取りに王子二人を加えてみよう。 「アイスは何のフレーバー? 季節モノのイチゴなんていいと思うけれど」と優雅にティーカップを傾けて口を挿むのが第一王子で、 「っていうか、ババロアにアイス添えればよくない? あれ、逆かな。アイスにババロアを添えて……ああ、どっちでもいいや」とどっちも食べてしまいたい第二王子。  ちなみに王子二人はローキィの孫にあたる。この国では代々、国王の子供が執政官となり、孫は王位継承権を持つ王子となることが決められていた。  第一王子並みに頭脳明晰でも超絶美形でもない、でもリュウ王子にはとてつもない力があった。  この魔法国家にとっては破格の武器になる“魔導士”としての力が。
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