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────目の前に見える格子戸から、明るい陽の光。
体という感覚はないが、その格子戸を抜けることは出来ない。
どうやら社の中にいるようだ。
冷たい社の中には、弱々しい小さなヘビが1匹。
「龍神さま、今年もありがとうございます。お陰様で豊作でございます」
明るい光と、暖かな人々の声。
時には社の周りで歌ったり踊ったり。
社を開けるものは無いが、蛇は不思議と少しづつ元気になっていった。
「龍神さま、龍神さま」
毎年、季節ごとに作物が供えられ、人々は足しげく通ってくる。
数年もしないうちに、蛇は天へも昇る龍になった。
社の中には、丸い玉を置いて、龍は社の裏の池に棲むようになる。
人々が祭りをする日には、人の姿に化けては一緒に歌い踊った。
鶴維の昔話を、映像で見たらこんな感じだったのではないか。
柊平は、格子戸の隙間から見えるその様子を見て思った。
子供の頃に見た昔話のようだった。
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