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柊平は、繰り返されるそんな景色を、ただ何とはなしにぼんやりと眺めていた。
人々が手を合わせる社の中は、存外居心地がいい。
それというのも、小さな蛇が龍神となるほど土地の人々の崇敬は厚く、龍の池周辺は力に満ちていた。
そしてその力を頼りにやってくる妖怪達も、種族関係なく百鬼夜行路を出たり入ったりしている。
弱っていた者が、次の朔の夜に帰ってくることもあるのだ。
柊平が開く百鬼夜行路は制約が多いが、この時代の百鬼夜行路にはそれが無いようだった。
鶴維の昔話では、かなり血なまぐさい時代であったようだが、柊平が見る景色にはそんな様子はない。
人々は自然を敬い、畏れる。
妖怪や付喪神は、そんな人々が恐れる闇夜に紛れて静かにやってくる。
人も妖怪達も平穏であるように、龍神は池を護っていた。
ふわふわと夢を見みているように、柊平はその様子を見ていた。
ずっと見ていたいような気さえする。
時間的な感覚も、今の柊平にはなかった。
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