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そんな平穏を眺め続けて、何度目かの朔の夜。
いつものように百鬼夜行の不思議な灯りが、社の前を通っていくのを眺めていた。
違和感を感じたのは、その行列が終わろうかというころ。
少し遅れて、ポツリと明かりが見えた時だった。
提灯には違いないが、あれは火だ。
土地の者は、朔の夜にここへは近づかない。
見える者が少なからずいたのだろう。
龍神さまの提灯行列が立つからと、祭りの折に年配の者が、子供らに話して聞かせていた。
では、何者か。
その答えはすぐに分かった。
とても嫌な感じのする刀が、社の前で抜かれた。
投げ出された提灯が、狂気的な炎を上げる。
百鬼夜行路へ入る直前の行列が、散り散りになった。
灯りが1つ、社の中の玉へ戻ってきた。
持ち主が消えた、いや、消されたのだ。
「これはいい。妖が斬れるとは誠であったな」
下卑た笑いが、耳障りだった。
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