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命に別状はない。 ただ、店には戻れないかもしれない。 両親から聞かされたのは、そんな話だった。 「なぁ、夜魅。妖怪って、人間の寿命が見えたりするか?」 店への帰り道、街頭に黒く浮かぶアスファルトに視線を落としたまま、柊平がぽつりと呟く。 「どうだろうね。妖怪と幽霊はそもそも別物だから」 夜魅は振り返らない。 「そっか」 柊平も夜魅もそれ以上口を開かず、寒さだけが耳を支配する夜道を歩いた。 妖怪、人間、幽霊、精霊、神様。 たぶん、幽霊は見たことがない。 百鬼の刀に指名されてから関わってきたのは、ほとんどが妖怪と呼ばれる者たち。 中には、精霊に近いような者もいたように思う。 鏡子に至っては神と呼称されるようだが、それでも妖怪に近い。 夜魅と撫で斬りは、元は神と呼ばれた龍が魂を分けた姿。 それは、今はなんと呼ぶのだろう。 建付けの悪くなった引戸(ひきど)を見つめ、柊平はふとそんなことを考えていた。
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