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翌日、夕暮れ近く。
硝子障子を透過した西陽が、東棟の廊下に格子の影を伸ばす。
東棟は、六畳間が3つ連なっている。
どの部屋も、店に置いてあるような古い本や道具がざっくり仕分けして積まれている。
いつもは中庭に面した廊下を、北棟に向かって通るだけの建物で、中を触るのは初めてだ。
「本⋯⋯かな?」
柊平は、手近なところにあった古書の1冊を手にとる。
「ちょっと安直過ぎない?」
不平を言いながらも、夜魅は棚の上の方の古書を、前足で器用に捲り始めた。
名前を探すなら、どこかに書いてくれていたら、これほど有難いことは無い。
ただ、そんなに分かりやすく置いてあるなら、この家で暮らしていた京介なら知っていそうなものである。
柊平の母と出会うまで京介が居たのは、3番目の部屋。
物置になったのは京介が家を出た後だろうが、3番目の部屋は、撫で斬りのある北棟に近い。
逆に、今いる1番目の部屋は、東棟では出入口に近いことになる。
京介が言っていたのは家全体の配置だが、同じ理屈で考えると、2番目の部屋が1番理にかなうように思えた。
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