001:夜明け

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* 昔からよく言われる…永遠に闇に包まれているものなんてないと… どんなに暗い闇だって、いつかは必ず明るい陽が射すと… 丘の上に腰を降ろし、太陽の動きに合わせて少しずつ顔を上向ける。 そうだね… 確かに深い闇は一生続くわけじゃない。 空に向かって明るい色が少しずつ染み出して、そして空はいつしか明るくなっていく。 だけど…… 夕方になれば、これとは逆のことが起きるんだ。 明るい光りは地にのみこまれ、あたりは闇に閉ざされる… そうだ… 僕は、夕陽… 沈みこむ場所を間違えて、そこから出られなくなった太陽みたいなものなんだ。 いや、違う… 僕は…… 嫌な物思いに更けっていた時、僕の目におかしなものが映った。 東雲色の空に浮かぶ「人」のシルエット… 馬鹿な…「人」が空を飛ぶわけなんて… 立ち上がり、眩い光りに目を細めながら、僕はそのシルエットを確かめようとした。 まるで、僕のその気持ちが通じたかのように、おかしなものは僕に向かって近付いて来る。 それは、やはり「人」だった。 蒼く長い髪をなびかせ、とても気持ち良さそうに浮遊する。 変わり行く色の空を泳ぐ魚のように… 「わっ!」 僕は思わず声を上げた。 なぜなら、その「人」が、僕に向かって手を振ったから。 さながら、親しい友人に会った時のような笑顔を浮かべて…
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