001:夜明け

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「おはよう!」 呆然とみつめる僕に、「人」は、明るい声で挨拶をした。 木々の葉の色を映したかのような緑色の瞳はきらきらと輝き、その笑顔はあどけない少年のようだった。 なのに、不思議と落ちついた…貫禄のようなものが感じられることがどうにも奇妙だ。 そもそも、「人」が空を飛ぶということ自体が、酷く奇妙なことなのだけど… 「お…おはよう…」 「こんな所で何を…?」 「何って……」 「あぁ、失礼。 僕はアズロ。 ……ちょっと迷子になったみたいなんだ。 ここは一体どこ?」 迷子という言葉に僕は違和感を感じた。 到底、鳥には見えない…翼さえも持たない人が空を飛び、そして、その人が迷子になったと真顔で言う… 思わず失笑してしまった僕に、アズロは小首を傾げた。 「僕、なにかおかしなこと言った?」 「いや…そういうわけじゃ… でも、君は一体何者なんだい? どうして、空を飛ぶ事が出来るの? それとも、僕は幻を見てるんだろうか?」 「僕はさっきも言った通り、アズロ。 今までいろんな名前を使ってきたけど、アズロは本名だよ。 それに、僕は幻でもなんでもない。 ほら……」 彼は、屈託のない笑みを浮かべながら、僕に片手を差し出した。 僕は、その手に反射的に身を引き、その途端、彼の表情が怪訝なものに変わった。 「……どうかしたの?」 「ごめん… ……馬鹿だね…幻なのは君じゃなくて僕の方なのに…」 「……どういうこと?」 いつもの僕ならきっと、そのまま何も言わず彼の元から離れただろう。 そうしなかったのは、彼が不思議な「人」だったせいなのか…? 答えの代わりに、僕はそっと片手を差し出した。
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