015:走り続けたその先には

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モニカは本当に働き者で、とても気の利いた女性だった。 彼女が村に来てくれたおかげで、村の再建はますますはかどった。 以前より少しはマシになったとはいえ、こんな不便で何もない村にはすぐに飽きて町に戻るだろうとガーランドさんは言ってたけど、その予想は完全にはずれた。 彼女は、少しも手を抜くことなく村のために働き、気がつけば半年の時が流れていた。 その頃には僕がここに来た時とはかなり違う風景に変わっていた。 木々の緑に鮮やかな花の色が加わり、川には水量が増し小さな生き物が住むようになっていた。 畑も広がり、作物も僕らだけでは食べきらない程実るようになった。 来年あたりには果物も実るだろうって、セルフィナは言っている。 考えてみれば、僕もここに来てもう一年が過ぎたことになるけど、そんな実感はまだない。 毎日やることが山積みで、この一年はしみじみと考え事をする暇もなかったせいか、本当に時の過ぎるのが早かった。 「ねぇ、シンファ… あとどのくらいしたら、昔のような村に戻るかしら?」 畑からの帰り道、赤く染まった夕日を見つめながら、モニカが突然そんなことをつぶやいた。 「さぁ…どうだろうね。 最初僕がここに来た時は、とてもじゃないけどなんとも出来ないって思ったんだ。 ……だけど、一年でここまでよみがえった。 それを考えると思ったよりずっと早く再生してるって思うよ。 皆で頑張って来た甲斐があったよね。」 「……それだけじゃないわ。 自然の力が大きいのよ。 木も土も水も、頑張ってるのよ。 昔みたいになりたいって、頑張ってるんだわ。」 不思議な気がした。 僕はそんなこと、考えたこともなかったから。 確かに、彼女の言う通りだと思った。 モニカは僕より三つ年下なのに、ずっと大人びて感じられることがよくある。 しかも、僕が考えてもみなかったことを彼女はよく言うから、僕はその度、不思議な気分になってしまう。
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