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ココア
心愛はサークルの先輩鬼束と、小さなチョコレート屋を訪れていた。
白い壁に焦げ茶色を基調としたインテリアは、なかなかおしゃれで高級感がある。客のいない店内を見回し、4つあるテーブルの一番手前に座ると、鬼束はコートを脱ぎながらその向かいの椅子を引いた。
ふたりが席に着くのを見計らったかのように、ショーケースの奥から外国人の男の子が出てきた。店番を任されているのか、エプロンをして、きちんと磨かれた黒い革靴を履いている。
「いらっしゃいませ」
男の子は翠の目を細め、ハチミツ色の頭を下げた。笑顔で渡されたメニューの表には、厚手のカップで湯気を立てるホットチョコレートの写真が載っている。
「当店自慢のホットチョコレートはミルク、ダーク、ホワイトの3種類です。どうぞお試しください」
声変わり前の柔らかな声。外見からは予想できない、流暢な日本語だった。心愛がミルクのホットチョコレートを頼むと、鬼束は「じゃあ僕はダークで」と言って、男の子にメニューを返した。
「かしこまりました」
彼が下がった先には、光沢のあるチョコレートが宝石のように並べられたショーケースがある。一粒300円とかする系のチョコだな、と心愛は思った。
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