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夕方、私は地下室に向かった。
お兄ちゃんがね、どうしてもお見送りをしてほしいんだって。
そしたら今日の夜は頑張れるって言ってた。
そんなことで頑張れるならやるし、お父さんの期待の目もあったから行くけど、私行かないでも頑張れるようになってね?
シスコンのお兄ちゃん?
「お兄ちゃん、父様と母様と、一緒に行ってくるね」
「リズリエラ、私達が帰ってくるまで、いい子にしていてね。メイド達に迷惑をかけては駄目よ」
「行くぞ。遅れる」
グレートソーシャルへは魔法で飛んでいくらしい。
足元には魔法陣がある。
この間、ちらっと本で見たんだけど、魔法を使いまくれるのって、貴族だけで、平民に魔力などほぼないらしい。
だから、魔法陣は持ってるだけで凄いんだって。
私は見慣れてるから、やっぱこの家は凄いんだって思った。
「いってあっしゃい」
「いってきます」
お父さんが魔法陣に魔力を流すと、パァっと周りが光って、次の瞬間には誰も魔法陣の中にいなかった。
こういうのを実際に見ると、おおファンタジーって思うね。
「ミア、ご本読む!」
鬼の居ぬ間にである。
ミアがいるからそこまでいつもと変わらないけど、今日はお母さんの心配性もない。
私、めっちゃハッピー。
「はい、今日は歴史学セイファール史ですね」
ミアの回答に、私はゆっくりと頭を振る。
鬼の居ぬ間にだからね。
今日はいつもとは違うジャンルを読むんだよ。
「まほー」
それがいい、と小声で言う。
あんまりこういうのに言い慣れてないから、ちょっと恥ずかしい。
「魔法ですか?そうですね、せめて4歳になったらお見せいたしましょう。それまでは歴史学や国文学にお励みください」
ちぇ。
ミアめ、鬼の居ぬ間になのに。
せめて4歳って、それまで私のファンタジーはお預けですか!?
鬼なことをするなぁ、ミアは。
あっ、鬼の居ぬ間にの意味って、親の居ない間にじゃなくて、ミアの居ない間になんじゃ?
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