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かちゃりとメイドさんがドアを開けて、古い、少し埃っぽい匂いのする部屋の中へと入っていく。
見渡す限り本があって、今の私にはすごくいい場所である。
「どちらをお読みになるのです?」
「う!」
適当に本を指差す。
文字が読めるかどうか、分からないんだもん。
もしかしたら、言葉しか通じない、なんてこともあるかもしれないし。
あの神は未練がどうのしか言ってないし。
あー、せめて字が読めるかどうか聞いておけばよかった!
自分で得るなんて言っちゃ、困るのは自分なのに!
あぁ、あの時の私め、せめて基本情報くらい聞いておいてよ。
「こちらですね」
私が指した本を取ってくれた。
私は降ろされた椅子に大人しく座って、パラリと表紙を捲った。
へにょへにょへにょーとした文字であろう線たちが沢山書かれている。
でも、読めないことはない。
文法は頭にないが、単語たちは既に頭に入っているらしい。
1からやり直さなくていいだけマシと思うことにする。
ゆっくりゆっくり読み進めると、歴史書であるらしいこの本の内容をちょっとずつ理解出来るようになってきた。
まぁまだ文法は分からないんだけどね。
部屋にある振り子時計がカチカチとなるたびに、私は歴史の世界に飲み込まれていく。
昔の人々の記録とか、建造物なんかは、脳内で想像の当時の景色を浮かべてしまう。
ふいに、ゴーン、ゴーンと振り子時計が鳴った。
えーっと、大体3時間くらいは経ってると思う。
時計の読み方が逆なんだよね、この世界。
針が左から右に動くのに、未だ慣れない。
「お嬢様、そろそろお部屋に戻りましょう?ミアが必死で探してるそうですよ」
そりゃまずい。
急いで帰らねばならないではないですか。
「あーば」
手を伸ばして抱っこポーズを取る。
だってもう、歩くだけの体力ないんだもの。
一生懸命読んで、分厚い歴史書の3分の1しか読み終えていない。
いやぁ文法、まるで分からん。
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