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「手をとって。ヴィー」
たおやかに伸ばされる、主人の手。
少しでも加減を間違えれば壊してしまいそうなそれに一瞬目を落とし、再度主人に向けられる灰藍色。
「──…貴女がそう望むなら」
あまり感情を表に出さないくせに、こういう時だけ、常より優しい声を出すから。
彼を愛しく思う心が、ミアの心臓を戒めて離さない。
少し節ばった、男を意識させる大きな手が、少女の柔く小さな手を取る。
部屋の扉を開けると何処からか甘い花蜜の香りと、それに隠された微かな血臭が鼻先を擽った。
少しだけ柔く細められた目元。主人の歩調に合わせて導く番犬を、翡翠色はそっと盗み見て。
その口角を、小さく笑みの形に。どこか安心する子供のような表情で、少女は陽が差し込む廊下を行った。
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