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最悪な出会い
「では、その資料を見せて頂いていいですか?」
淡々とした、その言い方に宝条翠咲は手元の書類を差し出した。
彼と会うのは2度目だけれど、前回も、今回も、淡々としたその表情を崩すことはない。
弁護士である彼は、翠咲の差し出した書類を受け取り、慣れた様子でペラペラとめくってゆく。
「正直、これでは難しいですね。完全に否定する事は出来ないので、お支払いするしかないのかと。」
翠咲のここ数週間の頑張りを、一刀両断で否定された。
「そんな、だって、明らかじゃないですか?!これって、詐欺じゃないんですか?!」
「詐欺と言い切るには証拠が不足している、と言う事です。」
「充分に調査しました!」
「これでは、法廷で争えません。」
「先生はどちらの味方なんです?!」
「僕はどちらの味方でもありません。こちらから、それなりの顧問料を頂いている。だからこそ、きちんとした仕事をしているだけです。判例や法に照らし合わせて、見解を述べるならば、これでは、不十分としか言えない、と言うことです。」
この人が感じ良くて、よくやってくれるって言った奴、今すぐここに出てきて欲しい。
この人…いやむしろ、こいつ、超絶に感じ悪いんですけどっ!!
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