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序章「発見」
蒸し暑い8月の午後。
まばらに集まった野次馬を左右に分け、東京都北区のアパート『吉成荘』中庭に北区警察署のパトカーが侵入してきた。
経年数によってアパート建屋自体は朽ちかけてはいるが、その中庭は割と広く、普通乗用車3台は停められるほどの広さはあろうか。
地面は芝に覆われ、片隅には青々と深緑の茂る立派な桜の大木を携えている。その桜の木の下では、吉成荘の住人が集まり、今、直面している事態を口々に語り合っていた。
一人の住人女性は、そのグループから少し離れた、建屋脇に備付の二階へ上がる階段に腰を下ろし、肩を落としグッタリと脱力していた。
その女性の肩を摩り、中年女性の住人が慰めているようだ。
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