第一章 移住民

1/6
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ

第一章 移住民

 "起床プロセス完了。バイタル正常。おはようございます"  目を開けると、無機質な金属の天井に、快適な室温。最悪の目覚めだ。重たい気分と体を起こし、ベッド横の壁にもたれかかる。わざわざコールドスリープから起こされるなんて、ろくな事じゃない。 「今の状況は?」  確認すべきことは多い。今がいつで、ここが何処か、なぜ起きる必要があったのか。あと百回は寝たい気分だが、凍結装置自体はここにはない。今頃ガラクタになっていることだろう。  "現在の日時は西暦2754年3月18日15時37分。コールドスリープ期間は77日間です。14時間前の隕石回避プロセスの結果、当船は惑星ES704に接近しています。4分後に通信域に突入いたします。" 「4分後? なんでそんなギリギリなんだ」  "コールドスリープ期間により、起床プロセス前の解凍プロセスの所要時間が変化します。90日以内のコールドスリープであるため、解凍プロセスは15分となりました" もう少し早く、なんてことは言っても意味がないか。ベッドから立ち上がり、操縦室のドアへ向かう。  音もなく開いたドアの先には、簡易的なボタンが並んでいるだけの操縦席と、ガラス越しに見える緑と白の星があった──。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!