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ちょうど良い加減に酔ったかおるがサンダー&ライトニングに顔を出したのは、秋らしい夜風がすっかり涼しくなった頃。週の真ん中の深夜とあって、店内はかなり暇だ。
元妻にして最強の女友達の彼女と会うのは、息子の貴昭の結婚式以来だ。
「久し振りだな、飲み会か?」
和馬はおしぼりを手渡しながら尋ねる。
日付も変わる時間だが、かおるの巻いた髪も綺麗に施したメイクも崩れてはいない。いつものことながら、驚異的だ。
老けて見えると言われる瞳の大きな美人顔の癖に10は若く見える彼女は、実は和馬のたった2つ下だ。
「そう、歓送迎会でそこまで来たから、ついでにホスト初回荒らし行ってきたの」
「ついでがいきなり濃いんだよ、お前は。んで、何呑む」
笑い、オーダーを尋ねる。
「ビールでいいわよ。鏡月はもういいー」
「うち鏡月置いてねーぞ」
「ほんと美味しくないわ、鏡月」
「じゃ、何でホスト行くんだよ」
ホストクラブのフリードリンクは、どこの店でも鏡月が定番だ。別で注文すれば、たかがビールが数千円になる。
ビールをジョッキについで出してやると、かおるは待ってましたとばかりに半分程を一息に呑む。
「ま、何となく? この辺まで来たら行っとく? みたいな。ま、観光地ね」
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